2023年7月10日、米国のVideo Game History Foundationが、米国におけるクラシックビデオゲームの入手可能性に関する調査報告書を公開しました。
調査はSoftware Preservation Networkとの協力により実施されました。レトロゲームやクラシックゲームなどと呼ばれて復刻販売されるようにもなってきている歴史的なビデオゲームの商業的な入手可能性に関するものとしては初となる調査とあります。
米国のゲーム業界と文化財保存を推進する分野は、ゲームの保存の重要性については意見が一致しているものの、この問題がどの程度深刻で、どのように対処すべきかについては意見が分かれているとあります。特定のゲームの復刻市場は確かに存在するものの入手不可能となっているゲームは多いとし、調査では2010年以前に米国で発売された4,000本以上のビデオゲームについて、再発売されているか、あるいは権利者を通じて現在も入手可能かについて分析しています。
調査の主な結果として、以下等が挙げられています。
・米国で販売されたクラシックゲームのうち現在流通しているのは13%であり、87%は入手困難である。
・調査で追跡された全てのプラットフォームと期間において、入手可能性が低い。
・図書館とアーカイブズはゲームを電子的に保存することは可能であるものの、アクセスの提供は館内のみに限定される。
・ビデオゲーム業界のロビー団体は、図書館やアーカイブズ内でビデオゲームの保存が拡大されることに一貫して反対してきた。
87% MISSING: THE DISAPPEARANCE OF CLASSIC VIDEO GAMES(Video Game History Foundation, 2023/7/10)
https://gamehistory.org/87percent/
Survey of the Video Game Reissue Market in the United States(zenodo, 2023/7/10)
https://doi.org/10.5281/zenodo.8161056
参考:
オーストラリア国立フィルム&サウンドアーカイブ(NFSA)、同国のビデオゲームの保存のための収集に着手すると発表 [2019年09月27日]
https://current.ndl.go.jp/car/39123
英国におけるビデオゲームの保存について(文献紹介) [2014年11月11日]
https://current.ndl.go.jp/car/27402
ニューヨーク近代美術館(MoMA)がビデオゲームの収蔵を開始 [2012年12月03日]
https://current.ndl.go.jp/car/22428
E2042 – 独・ライプツィヒ大学におけるゲーム保存・学術利用
カレントアウェアネス-E No.350 2018.07.12
http://current.ndl.go.jp/e2042
CA1931 – 動向レビュー:ビデオゲームの目録作成とメタデータモデルを巡る研究動向 / 福田一史
カレントアウェアネス No.336 2018年6月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1931
CA1719 – 動向レビュー:デジタルゲームのアーカイブについて―国際的な動向とその本質的な課題― / 細井浩一
カレントアウェアネス No.304 2010年6月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1719