カレントアウェアネス
No.129 1990.05.20
CA664
ラヴィレット科学産業都市 メディアテックのOPAC
図書館業務の機械化が広範囲にわたって進んできた今日,当然のことながら図書館資料と利用者の間をつなぐ目録の在り方も変化し改善されよう。
国立国会図書館においては現在,和図書CD-ROM「J-BISC」の利用者端末5台を目録ホールに置いて試行的に利用してもらっており,また,当館作成の他のデータベースの機械検索システムの開発も検討が予定されている。
利用者機械検索目録ないしオンライン目録(OPAC)は開発,利用の歴史が浅く,現在は発展途上の段階にあるので,試行錯誤と改良が積み重ねられていくものと考えられる。紹介するフランスの場合はメディアテックのOPACも決定版ではなく,1986年の開館と同時に利用に供したOPACシステムは近い将来に改善されよう。
メディアテックはパリ郊外ラヴィレットに建設された科学産業都市(博物館複合体の固有名)のうちのマルチメディア図書館であって,所蔵資料が図書30万冊,雑誌2,700種,ビデオディスクに移し換えたフィルム,ビデオテープが2,300点を数え,その大半が自由接架方式である。フランス国内で初めて,機械化と自動化を全館にわたって徹底し,オンライン目録を取り入れた図書館でもあった。同館のシステムの特徴として挙げられるのは,収集,整理業務のデータ処理システムのMEDICISと,利用者を対象としたオンライン目録と貸出しのシステムOPAC GEAC*の二つのシステムが併用されている点である。
館内処理システムMEDICISの磁気テープから毎日,GEACシステムの磁気テープに変換されているが,GEACがMARCフォーマットに基づいているのに対し,MEDICISのデータがISBDに基づいて処理されているため,MEDICISから得た書誌データをMARCフォーマットに変換しなければならない。このときMEDICISでコントロールされていない著者の役割表示,セット物の巻次,ページ数のデータを一括して「注記ゾーン」に入れざるを得ない不都合を抱えている。ちなみに,目録規則はフランス規格協会作成の「NFZ44-050」の簡略版を採用し,件名典拠リストはBNIST(国立科学技術情報機関)のシソーラスと専門分野のシソーラスによる。
なお,メディアテックの館内には72台のOPAC利用者端末があちこち散らばって設置されており,他にビデオテックスサービスMinitel網を通して遠方から検索できる端末も備える。
簡略画面と詳細画面
OPACの画面に要求される要件は,データを凝縮して表示し,利用者が求める資料を速やかに固定し,しかも読みとりやすくなければならない。ところで,一画面の許容字数は1行80字,24行までしかなく,その上,ラベル(パラグラフの名称)と検索指示コマンドの表示にスペースが取られるので,実際には10-11行だけしか割当てることができない。また,オンライン目録では,一つの記入が一画面からはみ出すと,利用者は次画面に移ったとき前の画面を失ってしまう。これらの問題を解決する方法として,一般には,最初に簡単な書誌情報(所在記録を伴った)を示して,次に詳細な書誌情報を示すという段階を追って表示する方法がとられる。
メディアテックもこの方法を採用し,その「簡略画面」に表示されるのは,主な著者名,本タイトル,副タイトル,資料の種類,出版年,所在データ(請求記号,利用可能部数)である。コマンド「COM」で得られる補助的な詳細画面は,著者,本タイトル,副タイトル,言語,注記(ここには著者名からISBNまでISBDによる記述をまとめて表示。ただしタイトルは除く),セット物の総合タイトル,翻訳の場合の原タイトル,件名が示される。請求記号は詳細画面にはなく,簡略画面に戻らねばならない。なお,「詳細画面」は稀にしか使われておらず,大方の利用者は「簡略画面」で事が足りているようだとされている。
アクセスとリスト
アクセスは,TIT:タイトル,AUT:著者名,A-T:著者名−タイトル,SUJ:件名,NUM:番号(記入の番号,請求記号,ISBN等),MOT:タイトル,著者名,件名のうちの語,CRO:クロス検索が提供される。また,次のリストが一覧できる。
○該当タイトルもしくはアルファベットが近似するタイトルリスト○特定の著者について所蔵する作品もしくは綴字が著者に近似する作品リスト
○求める主題を含む件名リスト
典拠ファイルと参照
館内データ処理システムMEDICISには著者名典拠ファイルが5万件,うち参照が3千件,団体著者5千件(参照1,500件)が入っており,ほかに件名典拠ファイルがある。MEDICISでは「を見よ参照」で典拠標目が表示され,典拠標目を経てタイトルに辿り着く。しかし,OPACでは参照から直接タイトルまで行くようになっている。このサービスは幾つかの典拠標目に同じ参照が生じる場合に問題が生じるので,例えば,団体著書者の参照CSI< Paris >,CSI< Paris-La Villet >と< >内の補助的な項目を付して識別している。
副タイトル
副タイトルは資料の書誌記述にとって重要な要素であり,とりわけ学術出版物にとっては非常に重要である。MEDICISではこれが意味を表わすときはコロン「:」とアステリックス「*」をその前につけているが,OPAC GEACでは最初の副タイトルは全てタイトル検索とタイトル中の語検索で検索できるようにしている。
利用者とOPAC
利用者端末に関しては一般的な案内標識の方法と画面のなかで案内援助する方法の二つをとった。画面での案内表示の一例は次のとおりである。
ラヴィレット | GEACシステム |
著者検索 | |
著者とは: | 個人,組織,会議のどれかです。 |
例: | EINSTEIN ALBERTまたは |
EINSTEIN | |
世界保健機構 | |
SICOD |
機械検索目録を備える図書館の方が概して,印刷カード目録を備える図書館よりも目録検索の回数が多いといわれている。利用者にとって端末は機械というより,質問を投げかけ回答を待つ双方向性を持ったシステムであり,身体を移動させずに各種の目録が見れるからである。とはいえ,正書法とか検索システムの習得の問題は残る。
メディアテックにおいては1日平均4,000人の人が訪れ,そのなかの35%の人がOPACを利用している。検索の50%が件名による検索で,フリータームによる検索はごく少数に過ぎない。図書館員は自分たちの仕事の成果である目録に対する利用者の反応により敏感になった。
堂前幸子
*GEACはカナダの同名の会社のソフト名。アメリカの他,オランダ,カナダ,オーストラリア,イギリス,ポルトガル,フランス,スウェーデン,スイスで使われている。BNとポンピドーセンターも導入している。
Ref:Witt, Maria. Simplification ou complication ? Bulletin des Bibliotheques de France 34 (1) 48-59, 1989. Lisibilite del' OPAC.International Cataloguing & Bibliographic Control, 18 (4) 51-56, 1989.