CA650 – 映像・音楽資料の宝庫――NHKデータ情報部を見学して―― / 石川武敏

カレントアウェアネス
No.126 1990.02.20


CA650

映像・音楽資料の宝庫−NHKデータ情報部を見学して−

中堅職員研修の一環として,1989年10月30日NHKデータ情報部を見学した。同情報部は,非公開の資料室であるが,放送番組の企画・制作のための映像資料・音楽資料をはじめとする膨大な資料をもち,また,各種のデータベース群を構築している国内有数の専門図書館である。

資料室は9階と1階に分かれている。9階は音楽関係の資料室で,レコード約35万枚,CD約38,000枚,楽譜約11万冊,録音テープ約24,000巻を所蔵している。これらの資料はNHK独自の目録記入法によるカード目録とデータベースによって検索することができる。1階には図書・雑誌・新聞・映像資料など音楽関係以外の資料を置いている。なかでも特筆すべきものは映像資料で,ニュース,その他の番組映像や放映されなかった中間素材などを中心に,フィルム約24万巻,ビデオテープ約11万巻,写真のネガ・フィルム約91万点を有している。フィルム類は常時15〜18℃で保たれて保管されているが,最近では,より保管のしやすいビデオテープに転換を進めているようである。ビデオテープ類は,保存用,業務用,緊急用として同じものを3セットずつ保管しており,放送番組の制作等に頻繁に利用されている様子がうかがわれた。これらの映像資料は著作権をクリアしたものに限り,外部からの希望があればサービスセンターを通じ有料で複製に応じている。

NHKのデータベースは,1)本局と地域拠点局がもっているフィルムおよびビデオテープの所在情報が入っている「全国映像資料(データ件数約57万件)」,2)テレビニュースのヘッドラインおよび原稿が検索できる「ニュース情報(約9万件)」,3)こよみ365日,できごと情報,人物情報などからなる「記事情報(約8万件)」,4)NHKが所蔵している資料に関する「図書・雑誌(約22万件)」,5)「音楽(約14万件)」から構成されている。このうち,「記事情報」の一部と「全国映像資料」および「ニュース情報」は,最近,日経Telecomを通じて一般に公開され,外部でも利用できるようになった。

今回見学してみて,資料と人が効率よく回転している印象をうけた。特にCDは最近利用が多く,所蔵数の約半分が利用中の状態であるという。ちなみに職員数は約百人で,そのうち経理等の事務部門が約40人,音楽関係,図書,映像の各資料部門が各20名である。

メディアの多様化は急激に進行していても図書館における非図書資料の位置付けはそれほど高くなってはいない。今回の見学によって認識を新たにすることができた。

石川武敏