カレントアウェアネス
No.125 1990.01.20
CA643
英国図書館研究開発部(BLR & DD)−1988年の活動−
近年,英国の図書館・情報学分野の進展は目覚しいものがあり,目下,米国と並んで世界のトップレベルにあると云っても過言ではない。その牽引役となっているが,英国図書館研究開発部(British Library.Research and Development Department.以下BLR & DDと略称)である。
設立目的と運営
BLR & DDは,図書館や情報専門家のニーズに応えるため,最近,急速な発展を遂げつつある科学技術を図書館・情報管理分野に適応して,図書館などに蓄積された莫大な情報を如何にして効果的に伝達するかを研究することを目的として1975年に設立された。
その目的達成のために,図書館・情報学分野での専門家のみならず,科学技術,教育,研究政策立案者など巾広い人材よりなる頭脳集団“Intelligence gathering”を組織して,図書館・情報学分野の研究を委託して多くの業績や報告書を発表している。
1988年現在のBLR & DDの専任職員数は21名であった。
また,1988年度の委託研究費の内訳は次のとおりである。
(研究助成件数) | (研究助成金額) | |
外部研究委託費 | 41件 | 1,580,000ポンド |
英国図書館法(British Library Act) | 9件 | 120,000ポンド |
ウォルフソン財団寄付 | 24件 | 250,000ポンド |
公共図書館発展促進計画 | 13件 | 197,000ポンド |
計 | 87件 | 2,147,000ポンド (約4億8,000万円) |
なお,委託研究発表報告書数は54点であった。
研究開発部諮問委員会(ACORDD)
BLR & DDの運営上のアドバイスを行なうため研究開発部諮問委員会(Advisory Committee for the Research and Development Department.ACORDD)が設けられているが,1988年におけるACORDDの主要活動は,来年度以降5ヵ年間のBLの長期戦略行動計画立案を行なっているBLR & DDを支援することであった。
ACORDDの活動の一つとして,BL以外の図書館における研究のための財政的支援,図書館・情報学分野の新入研究者への奨励,BLの運営管理の効率化等も含まれている。
最近の顕著な例としては,ヨーロッパ共同体図書館行動計画“the Plan of Action for Libraries in the European Community”に起因するヨーロッパ内での図書館共同研究がBLに影響を及ぼすと思われる諸問題を指摘している。
研究委託の内容
1988年度中にBLR & DDが行なった研究委託の内訳は以下のとおりである。< >内は例。
- 基礎的情報管理技術研究
<農村地域における図書館サービスのためのマイクロ・コンピュータの適用実験。ADONIS(Article Delivery over Network Information)への参加実験,電子出版,光学的記憶メディア,図形情報等の研究> - 図書館業務機械化研究
<図書相互貸借のための電信連絡費用の経済効果の比較研究> - 書誌管理センター(Centre for Bibliographic Management)
<UK-MARCのヒット率研究,書誌ネットワーク研究> - 図書館調査
<図書館財政,図書館協力,資料収集分担の調査> - 図書館・情報政策研究
<英米加3国図書館政策討議によるグレネリン宣言(Glenerin Declaration)> - 事業情報研究
- 学術情報研究
- 人文科学情報研究
- 情報利用者教育のための研究
<職業教育,中等教育領域での図書館利用者教育カリキュラム> - 人的資源,図書館・情報専門家の教育訓練
- 図書館・情報専門家に対する情報サービス
- 全英書誌研究基金(British National Bibliography Research Fund)
- 他の図書館への研究費助成
- 公共図書館発展促進計画
- 国際的連繋
- 国内外の諸会議への出席,海外視察訪問
- 研究成果の広報
これらの研究委託報告書は,1965〜1975年は,OSTI report(Office for Scientific and Technical Information Report)として,また,1975年以降はBLRD reportとしてシリーズ番号が与えられ,マイクロフィッシュで出版されており,国立国会図書館図書館学資料室でも閲覧することができる。
中森 強
Ref:The British Library.Research and Development Department.Annual Report 1988.