CA606 – 全国レベルの資料保存計画―アメリカ / 大泉典子

カレントアウェアネス
No.119 1989.07.20


CA606

全国レベルの資料保存計画−アメリカ

酸性紙問題に直面する米国では,3つの主要な解決法が検討されている。すなわち,過去の劣化資料のマイクロ化,現在の酸性紙本の脱酸,そして未来の本のための永久紙(中性紙)の利用促進である。

全米人文科学基金(National Endowment for the Humanities)保存局の1989年度予算は,8万ドル上乗せした12万5千ドルに増額されることが決定した。これによって,20年間におよそ300万冊におよぶ劣化資料を救う全米マイクロ化計画が始動することになる。

保存とアクセス委員会のパトリシア・バッティン(Patricia Battin)委員長が,議会の公聴会で提示した原案によると,ARL(研究図書館協会)加盟の20機関が各々年間7,500冊分のフィルムを作成する。年間で15万冊,20年間で300万冊のマイクロ化が達成されることによって,この間に塵と化してしまうであろう1千万冊以上の資料のうちの必要なものを残すことが可能になるという。バッティン計画の1つの目的は,劣化資料の保存問題に数量的に実現可能な目標を設定することによって,この問題が解決し得る性質のものであることを示すことにある。また,この計画では,マイクロ化予定資料及びマイクロ化済み資料の書誌レコードをRLINやOCLCのデータベースに入力することによって,マイクロ化の重複を防ぐことになっている。

一方,今年2月8日には,ペル(Claiborne Pell)上院議員による永久紙(中性紙)使用の決議案が発表された。この決議案には,他に19名の上院議員が共同提案者として加わっており,出版物に中性紙を使用するよう主張している。この決議案では特に次の6点が強調されている。

  1. 政府機関は恒久的価値を持つ出版物に中性紙を使用する。
  2. 政府文書には文書保管に適した質の紙を使用する。
  3. 米国内の出版社は中性紙については米国国家規格(American National Standard)に従う。
  4. 出版社が中性紙を用いる場合にはその旨を出版物,広告,目録などに記載する。
  5. 中性紙の生産及び中性紙を使用すべき出版物の統計を編集する。
  6. LC,国立公文書館,国立医学図書館,国立農学図書館は,中性紙使用の進展状況を監視し,その結果を毎年議会に報告する。

この議案はまた,ALA,ARLなど図書館を中心とする多くの教育文化機関からの支持も得ている。

大泉典子

Ref. NEH capability budget approved: The Abbey Newsletter 12 (7), 1, 1988.
Structure of a national cooperative microfilming program: Commission on Preservation and Access Newsletter 1 (1) 1, 1988.
Senator Pell introduces permanent paper resolution: LC Information Bulletin 48 (8) 70-71, 1989.