国立国会図書館では,平成14 年度を中心に組織・機構再編を実施し,それまで図書館研究所が実施していた図書館及び図書館学に関する調査・研究について,関西文化学術研究都市に新たに設置された関西館に属する事業部図書館協力課が引き継ぎました。それを機として,本シリーズは体裁を新たにして継続刊行することとなりました。
本シリーズは,昭和35 年にその第1 号が刊行され,特集として「閲覧目録の諸問題」が組まれておりました。あとがきには,膨大な目録カードと複雑な排列法に触れて,「近い将来において,大図書館の目録が現在果たしている機能にとってかわり得る機械が実用化されるという予想は今のところなされていない」と述べられております。以来45 年,目録は機械化され,検索のみならず貸出等のサービスを支えるシステムとして機能する時代になりました。さらに今日では,これらの目録やサービスがよりよいものとなるよう,公共図書館や国立図書館の間で連携を深め,高度にネットワーク化されつつあります。
そこで本号では,「デジタル環境下におけるILL,ドキュメント・デリバリーとその運用基盤」という総合タイトルのもと,総合目録ネットワークに関する記事を2 件,ドキュメント・デリバリーに関する記事を1 件,掲載いたしました。
1 件目の「国内公共図書館の相互貸借等に関する調査報告書」は,国立国会図書館総合目録ネットワーク事業の目的のひとつである「公共図書館の県域を越える全国的な相互貸借の支援」に着目し,総合目録と相互貸借の関係の実状について考察を試みています。また,この事業の一環として毎年「総合目録ネットワーク参加館フォーラム」を開催しており,2 件目の「総合目録の現状と今後の方向性」は,第12 回(平成17 年2 月)の開催に際して行われた講演記録です。3 件目の「デジタル時代のドキュメント・デリバリー・サービス:ビジョンと戦略」は,平成15 年度・16 年度の2 か年にわたって実施した「電子情報環境下における科学技術情報の蓄積・流通の在り方に関する調査研究」の一環として平成16 年12 月に開催された,同名の国際セミナーの記録集となっています。
当館では,図書館の巨大な変化と成長の時代にあって,図書館及び図書館情報学に関する調査研究を一層広く深い視野をもって果たしていきたい所存ですので,よろしくご鞭撻賜れば幸いです。最後に,本誌に掲載された調査研究については,多くの機関・人々にご協力いただきました。末筆ながら,厚くお礼申し上げます。