2.3.調査結果分析
電子資料全体の利用不可原因を図2.3-1、利用不可原因の変遷を図2.3-2に示す。
図2.3-1 利用不可原因(全体)
図2.3-2 受入年度別利用不可原因および利用可資料の割合
電子資料全体の利用不可原因の半分はOS(OSとアプリケーション・ソフトウェアの不適合)に由来するものであり、3割がアプリケーション・ソフトウェア(アプリケーション・ソフトウェア入手不可、アプリケーション・ソフトウェアとプラグインの不適合)に、1割強が媒体(媒体の技術的旧式化、媒体の劣化)に由来することがわかる。
受入年度を過去に遡ると、利用不可原因の割合は変化し、ある程度の傾向を見て取ることができる。
(1)最近のものほどOSが利用不可原因となる場合は少ないが、過去に遡るほど増えるとは言い切れない
当該電子資料が再生環境としている旧OSと最新OSとの間の機能的継続性と類似性、OSのバージョンアップ時期、旧OS販売中止時期や、当該電子資料が使用しているOSの機能などにより、利用の可および不可が決まる。かつて「国民機」とも呼ばれたPC-98用に作成された電子資料を国立国会図書館でも所蔵しているが、最新OSで利用可能なものと不可能なものに分かれるのはこのためである。
(2)利用不可原因がアプリケーション・ソフトウェア関連となる場合は過去に遡るほど大きいとはいえない
利用不可原因がアプリケーション・ソフトウェア関連である割合は平成9年度までは減少しているが、それ以降は増加に転じている。しかし、決して多いとはいえない資料点数、調査対象としたサンプル数の少なさは十分考慮すべきであり、また、調査対象となったサンプル如何によって結果は大きく異なる可能性がある。
平成11年度の利用不可原因には、再生アプリケーション・ソフトウェアとしてAcrobatReaderを使用するものであるが、最新のAcrobatReaderと媒体に同梱されたプラグインが不適合のため再生ができなかったというものが4件含まれている(利用不可原因がアプリケーション・ソフトウェア関連となるもの全5件中4件)。
この調査では、利用不可とはならなかったが、国立国会図書館はWebブラウザを再生用アプリケーション・ソフトウェアとするものも数十点所蔵しており、今後も増えていくと思われる。AcrobatReaderだけでなく、Webブラウザもプラグインを使用するものであり、将来同様の不具合(アプリケーション・ソフトウェアとプラグインの不整合)が発生する可能性がある。
(3)利用不可原因が媒体である割合は過去に遡るほど大きい
調査対象となった媒体の受入時期は、調査期間(平成15年12月〜平成16年1月)の18年程前〜5年前であり、媒体寿命を超えたために利用不可となったものはないように思われる(8)が、規格自体の変遷(衰退)のために利用が困難となる媒体は今後も増加すると思われる。すでに3.5″FDについては記録容量・媒体の安全性の点で現在流通中の他の媒体と比べて大きく劣っており、今後数十年にわたって、利用、生産と流通、対応機器と対応ドライバソフトウェアの生産と流通が継続することは考えられない。
ある時点を境に3.5″FDを媒体とする電子資料は一斉に利用困難となることが想定される。現在のPCでは3.5″FDドライブが標準で装備されているものが多いが、CD-ROM/R/RWドライブの価格低廉化と、扱うデータ量の増大にともない、FD自体の使用頻度が低くなりつつある。FDドライブを標準では装備していないPCも存在する。現在、記録媒体の大部分を占めるCDやDVDについても数十年先には同じ状況を迎えると思われる。
(8) 5″FDはドライブを入手できなかったのでそのデータ記録状態は不明。