4.4 増加する電子書籍の利用

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■個人利用

 電子書籍の個人利用の悉皆的なデータはない。『電子書籍ビジネス調査報告書 2008』では、「ケータイを用いてインターネットを行っている11歳以上の個人」を対象に「ケータイ電子書籍」について調査を行っている。(2008年6月13日~7月2日調査、利用率調査11,632サンプル、利用者実態調査1,172サンプル)

 この調査によると、ケータイ電子書籍の認知度は91.9%に達し、ケータイ電子書籍の利用率は29.6%(2007年調査では21.7%)、有料コンテンツ購入は7.9%(同3.9%)であり、有料コンテンツ購入が伸びていることが分かる。また利用率では女性の10代で5割、20代で4割強、購入率は30代女性を中心に高い。購読されている電子書籍のジャンルは「コミック・マンガ」75.8%、「小説やライトノベル、ノンフィクションなどのテキスト系読み物」41.0%となっている。電子書籍に対する不満点や要望では、携帯電話端末や通信環境といった技術的な面への不満が上位を占め、「タイトル数が少ない」といったコンテンツやサービスに対する不満も多いことが分かる。(『電子書籍ビジネス調査報告書 2008』インプレスR&D、2008、p.192)

毎日新聞社の「第61回読書世論調査」(2007年6月調査)によると、「ケータイ小説」を実際に読んだ媒体について10代後半女性では「携帯電話」51%、「書籍」49%と、本ではなく携帯電話で読む人の方が多いという逆転現象が起こっている。

毎日新聞社と全国学校図書館協議会の「第54回学校読書調査」(2008年6月調査)では、「ケータイ小説」を実際に読んだ媒体について、「携帯電話」が小学生5%、中学生8%、高校生33%であるのに対して、「出版された本」が小学生10%、中学生28%、高校生13%、と高校生になると本よりも携帯電話で読む比率が高まってきていることが明らかになった。

 

■機関利用

一方、電子書籍の機関利用では、2007年11月からスタートした東京都千代田区立図書館における電子書籍貸出しサービス、また大学図書館では同じく2007年11月から紀伊国屋書店とOCLCによる学術系電子書籍サービス「NetLibrary」に和書コンテンツが搭載されるなど、新しい展開がある。今後この分野での利用実態が明らかになっていくことと思われる。

 

■国立国会図書館職員の利用意識

 国立国会図書館職員を対象とした「電子書籍の利用の実態・意識に関するアンケート調査」(2008年10月~11月5日実施、回答者373名)の結果では、「過去1年間に業務以外に電子書籍を利用したことがある」という回答が約34%、利用デバイスはPCが80.8%、利用ジャンルは「小説」や「学術書」が多いといった結果となっている。また「図書館と電子書籍との関わり」「電子書籍について感じていること」の自由記述では、図書館は関わりを持つべきとの意見が多いが、制度的な部分や技術的な課題等、クリアすべき課題を乗り越えることを条件としてあげる意見が多く見られた。