はしがき

はしがき

 情報技術の進展を基盤とした新しいサービスの導入はもとより、指定管理者制度の導入や業務の民間委託の伸長、定年退職者の増加など、我が国の図書館を取り巻く環境の変貌は著しく、また課題が多い状況である。このような中、他国の図書館ではどのような計画を立案し、どのようなプロジェクトを遂行して環境の変貌や課題に対応しようとしているのかを知ることは、当館及び我が国の図書館の将来にとって必要不可欠である。しかしながら、各国の政策、財政、法制度や社会基盤、また図書館界全体の方向性などを踏まえた鳥瞰的・基礎的な調査研究は未だ行われておらず、個々の図書館の事例を散発的に紹介する論文・記事が見られる程度である。そこで、当館では平成18年度の「図書館及び図書館情報学に関する調査研究」として、世界の図書館活動を牽引する存在である米国の図書館事情について調査を行った。今回刊行する『図書館研究シリーズ』第40号は、その調査成果を、論集の形で取りまとめたものである。

 この調査は、社団法人システム科学研究所に委託し、以下のメンバーによる研究会が企画・構成を担当した。

主査:山本 順一(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科教授)
委員:井上 靖代(獨協大学経済学部助教授)
      岩崎 れい(京都ノートルダム女子大学大学院人間文化研究科助教授)
      吉田 右子(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科助教授)
                                              (以上敬称略、所属は調査実施時のもの)

 また本書の執筆・作成に当たっては、研究会メンバーのほか、各領域の研究者(米国在住の図書館員を含む)の協力を得た。本書の中で用語・訳語が不統一な箇所が存在するが、これは延べ数十名にも及ぶ執筆者による論集という性格を踏まえ、各執筆者の意図を尊重した結果であり、ご寛恕いただきたい。なお、これらの表記の揺れは、巻末の索引でできる限り吸収している。

 執筆者各位のご尽力により、米国の図書館事情を概観できる論集が出来上がったことに、改めて御礼申し上げたい。

平成20年10月

関西館図書館協力課長

本吉 理彦