E938 – 図書館組織の気風と多様性を評価する“ClimateQUAL”

カレントアウェアネス-E

No.152 2009.06.24

 

 E938 

図書館組織の気風と多様性を評価する“ClimateQUAL”

 

 北米研究図書館協会(ARL)による図書館評価の指標としては,サービスの質を評価するLibQUAL(CA1404CA1526参照)が知られているが,ARLは新たに,図書館組織の気風(climate)と多様性(diversity)を評価するという“ClimateQUAL”を導入している。これは,1999年以降,メリーランド大学図書館がメリーランド大学産業・組織心理学プログラムと共同で開発していたOCDA(Organizational Climate and Diversity Assessment:組織の気風と多様性の評価)を前身とし,2007年からARLが関与して他の図書館にも使用できるよう一般化が図られ,2009年にClimateQUALという名称となったものである。

 ClimateQUALは,自組織の気風等についての職員の評価を調査するためのツールであり,多様性への取り組み,組織の方針と業務手順,職員の態度,に関して職員がどう感じているか,そしてそうした職員の意識がサービスの質にどう影響を与えるかを調べる。

 目的としては,(1)健全な(healthy)組織の気風と多様性を育成すること,(2)気風と多様性についての職員の意識を知ること,(3)職員からのフィードバックの活用を促進すること,(4)組織の気風を管理するベストプラクティスをみつけること,(5)参加館が調査結果を理解し行動すること,が挙げられている。

 調査はオンラインで行われ,約200の質問が用意されている。質問は2つの部分からなっており,職員個人が属する集団(人種,エスニシティ,ジェンダー,宗教,学歴等)に基づく部分と,職場組織のチームに関する部分がある。質問項目としては,多様性,継続学習,イノベーション,正義・公平性,仕事の満足感,リーダーシップ,顧客サービス,チームワーク等があり,具体的な質問としては,チームワークに関して「組織がチームの目的を明確に示している」,リーダーシップに関して「直属の上司は人間関係スキルが優れている」等がある。これらの質問に対し,「とてもよく当てはまる」から「まったく当てはまらない」の7段階から回答を選択するようになっている。

 参加館は,自館の状況を知るだけでなく,他館での取組み等の情報を共有できることが利点の一つとされている。ただし,調査には個人的な属性に基づいて答える部分があるため,回答の秘密性の保持は最重要課題とされており,結果報告は回答者が特定できないような形となっている。

 ClimateQUALの研究チームのHanges博士は,「健全な組織」の定義として,職員が権限を与えられていると感じていること,職員が自分の価値を認められ公平に扱われていると感じていること,組織の方針や業務が目標の実現のために一貫していること,等を挙げている。

 こうした「健全な組織」の形成には,組織の気風や職員の多様性が関与していると認識されており,それを評価するためのツールとしてClimateQUALが登場したものと思われる。

Ref:
http://www.climatequal.org/
http://www.acrl.org/ala/mgrps/divs/acrl/publications/crlnews/2009/mar/climatequal.cfm
http://www.climatequal.org/bm~doc/kyrillidou_climatediversityassessment.pdf
http://www.arl.org/news/pr/climatequal-web-site-31mar09.shtml
CA1404
CA1526