E923 – NIIの次世代目録所在情報サービスの在り方は?<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.149 2009.05.13

 

 E923

NIIの次世代目録所在情報サービスの在り方は?<文献紹介>

 

 国立情報学研究所(NII)が「学術コンテンツ運営・連携本部図書館連携作業部会」の下に設置している「次世代目録ワーキンググループ」はこのほど,2008年3月31日公表の中間報告(E772参照)を踏まえ,NIIと目録所在情報サービスの参加機関が取り組むべき課題を『次世代目録所在情報サービスの在り方について(最終報告)』として取りまとめた。最終報告では「資料:電子情報資源への対応」「システム:データ構造とデータ連携」「運用:体制の抜本的見直しに向けて」という3つのテーマごとに問題点を整理し,検討結果や課題をまとめている。

 「資料:電子情報資源への対応」ではまず根本的な問題として,NACSIS-CATへの電子情報資源(電子ジャーナルや電子書籍など)の目録所在情報の蓄積が進んでいないことを確認している。そして,現在のNACSIS-CATが印刷体の資料を想定して構築されていることがその一因であること,またこれにより印刷体と電子ジャーナルの一元的検索ができないなど,電子情報資源の円滑な利用に支障があること等を問題点として挙げている。その上で新システム構築に向けて,電子情報資源管理システム(ERMS)と電子情報資源の目録作成との関連性,出版社やベンダーによる電子情報資源のメタデータ提供状況,印刷体か電子情報かを問わない「新しい資源発見システム」の実現,書誌データ・アクセス範囲データを格納する「電子情報資源データバンク(ERDB)」を中心とする電子情報資源管理のモデル案等について検討を加えている。そして,システムやデータベース,データ交換の形式等の仕様の策定を今後の課題として挙げている。

 「システム:データ構造とデータ連携」ではデータ構造とデータ連携に分けて,問題点や検討結果などをまとめている。まずデータ構造の問題点を,他の図書館システムとのデータ交換,図書館コミュニティ以外とのデータ交換,OPACの機能革新の模索,システム運用の見直し,の4つの視点から整理している。これらの諸問題を解決するにはNACSIS-CATの現行のデータ構造を基本的なレベルから見直すことが不可避ではあるものの,検討のキーとなるデータ構造の標準化,国際化に係る議論が継続中(CA1521CA1665CA1686E749参照)であるため,各種標準が具体的に固まった後で,慎重に見直すことが確認されている。次にデータ連携につい,NACSIS-CATのAPIの公開を中心に取り上げている。APIを公開することにより,目録データの価値や利用者にとっての利便性の向上が期待できる(CA1677参照)としながら,提供範囲,データ内容,アクセス頻度等,運用面での課題について引き続き検討し,共同分担目録の理念にも適う仕組みを考案する必要がある(E864参照)。

 「運用:体制の抜本的見直しに向けて」では,一定水準の目録データベースの継続的・効率的運営を実現するため,NACSIS-CAT外に存在する書誌データの活用と,共同分担方式の最適化に向けた見直し,の2つの論点について検討結果をまとめている。前者では,外部書誌データの利用可能性を探るため,和図書について複数の実証調査を実施し,その結果一定の効果が確認されている。今後の課題としては,洋書についての外部書誌データの利用可能性調査の実施,他機関との連携の検討が挙げられている。後者では,オリジナルカタロギングを担う「目録センター」館の指定,参加機関へのインセンティブモデルの導入,参加機関の機能別グループ化,の有効性を示唆している。

 最終報告の末尾には,次世代目録所在情報サービス構築に向けての,2015年までのロードマップが示されている。今後の展開を引き続き注視したい。

Ref:
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/archive/project/catwg_last.html
CA1521
CA1665
CA1677
CA1686
E749
E772
E864