E826 – 電子タグに関する出版・図書館界の取り組みの最新動向(日本)

カレントアウェアネス-E

No.134 2008.08.27

 

 E826

電子タグに関する出版・図書館界の取り組みの最新動向(日本)

 

 出版流通の改善,出版情報基盤整備を目的として,主に電子タグの導入に向けての実証実験を2003年度から行ってきた有限責任中間法人日本出版インフラセンター(JPO)(E389E678参照)が,2007年度の活動報告を公表した。

 JPOは,組織内にICタグ研究委員会を設置し,電子タグの導入に向けての研究活動を実施してきた。同研究委員会は,出版流通の各過程に対応する形の(1) 装着・古紙化部会,(2) 出版社・取次倉庫部会,(3) 書店部会,(4) 図書館部会の4部会からなっている。今回公表された活動報告の多くは,これらの部会からの報告である。

 活動報告において,装着・古紙化部会は,電子タグの書籍への高速な装着方法,電子タグがついている書籍の古紙・パルプ化,既刊の書籍への電子タグラベルの装着方法の3点について,ワーキンググループを設けて検討・検証を行っていることを報告している。出版社・取次倉庫部会は,実験の段階からさらに一歩進めて,出版社共同企画の「謝恩価格本ネット販売フェア」で,電子タグを用いた実際の物流を行い,その効果・課題を検証している。また書店部会は,2007年度の経済産業省委託事業として実施した書店万引き調査等の結果を報告している。これは,電子タグ導入の費用対効果を算出するとともに,書店における電子タグ普及のためのガイドラインを策定することを目的としたもので,調査の結果,(a) 書店の売り上げロスのうち1.41%が万引きによるものと推定されること,(b) 万引きによる被害のうち最も金額・冊数が多いのがコミックであること,(c) 万引きの目的としては「最終的に新古書店で換金する」が多いと推察されること,(d) 2年目以降,電子タグ導入の費用対効果が得られること,などを報告している。図書館部会からは,JPOによるUHF帯電子タグデータフォーマットの図書館用の部分を,現在策定中の国際標準(ISO/CD 28560「図書館におけるRFIDの使用のためのデータモデル」)に取り込むよう提案する方向であること,電子タグ導入に伴うプライバシー・ガイドラインについて検討していることを報告している。

Ref:
http://www.jpo.or.jp/topics/data/20080604-jpoinfo.pdf
http://www.jpo.or.jp/topics/data/20080801-jpoinfo.pdf
http://www.bargainbook.jp/
http://www.jla.or.jp/ictag.pdf
http://www.bs.dk/standards/rfid/
E389
E678