E389 – 出版業界におけるRFID実証実験 <文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.67 2005.10.05

 

 E389

出版業界におけるRFID実証実験 <文献紹介>

 

日本出版インフラセンター. 出版業界における電子タグ実証実験に関する調査報告書 : エネルギー使用合理化電子タグシステム開発調査事業. 2005. 210p. (オンライン), 入手先 < http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/tag_jisshou/book.pdf >, (参照 2005-09-26).

 非接触で情報のやり取りを行うことができる電子タグ(RFID; E140参照)は,日本国内では鉄道のプリペイドカードなどに利用され,一般に普及しつつある。図書館界においても,バーコードの代替として,資料管理などに使われ始めている(CA1517参照)。

 3月23日,総務省は高出力型950MHz帯(UHF帯)パッシブタグシステムの制度化を行う旨を発表した。この制度化により,これまで国内外で主に使われてきた135kHz帯,13.56MHz帯および2.45GHz帯のRFIDよりも遠くまで通信ができるようになり,RFIDの利活用分野が拡大することになる。このような総務省の法的整備に併行する形で,経済産業省では2003年度からUHF帯RFIDの利用可能性を探る実証実験を外部委託して行っている。本報告書は2004年度に出版業界で行われた実験の結果と考察をまとめたものである。このほかに,医薬品,物流,レコード・DVD・CDなどの業界でも実験が行われた。

 本報告書の実証実験では,(1)書籍の種別(コミック本・上製本・写真集)ごとの読み書き距離と指向性,(2)新刊書へのRFIDの装着方式,(3)流通プロセスにおける検品・伝票作成・レジ精算等の業務の効率化,(4)図書館における蔵書点検・貸出・帯出管理・排架状況監視等の業務の効率化についての検証が行われた。これにより,一定の業務効率化が期待できることがわかった一方で,RFIDと紙質に相性がある,製本プロセスではカバー装着時にRFID破損が発生しやすい,複数冊結束された場合やスチール製の棚での読み取り精度が低い,といった課題も判明した。今後のRFIDの仕様として,複数冊を一度に読み取れるようコリジョン(電波の衝突)が発生しにくいもの,また金属の影響を受けにくいものが求められるほか,ハンディタイプのアンテナを備えたリーダーの開発が必要であると結論付けられている。

 なお,本実証実験に参加した日本図書館協会からは9月1日,RFIDのデータフォーマット素案が発表された。これはRFIDに記録する情報の標準化を図るものであり,2005年内を目途として意見募集を行っている。

Ref:
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050323_10.html
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/tag_top.htm
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/tag_pdf/17_tag.pdf
http://www.jla.or.jp/ictag.pdf
E140
CA1517