E678 – 出版業界における電子タグ実証実験の動向(日本)

カレントアウェアネス-E

No.111 2007.08.08

 

 E678

出版業界における電子タグ実証実験の動向(日本)

 

 日本の出版業界では,書籍や雑誌の個別管理を可能にし,多様な販売/取引条件による流通を実現するものとして,また,物流や在庫管理,マーケティングの効率化,不正流通や万引きの防止・抑止などにも効果が期待できるものとして,電子タグが注目されている。電子タグを出版業界に導入した場合の効果について,日本書店商業組合連合会,日本書籍出版協会,日本図書館協会など5団体が設立した有限責任中間法人日本出版インフラセンター(JPO)が,2003年度から経済産業省の委託事業として実証実験を行っているところであるが,このほど,2005,2006年度の実験の成果が公表された。

 JPOは,2003年度に電子タグの読み取り精度などの基礎実験を行い,2004年度には実際の製本ラインで新刊書に電子タグを装着し,流通プロセスおよび図書館での各種業務(図書館の場合は蔵書点検,貸出および帯出管理の3業務)における有効性を検証する実証実験を行っている(E389参照)。

 2005年度は,これらの成果をもとに,書籍と音楽・映像ソフトの両方を扱っている「複合型店舗」での業務処理および消費者への新しい付加価値提供サービスの実証実験を,音楽・映像ソフト業界と協同して行った。その結果,業務処理のスピードが短縮されることや,消費者が電子タグを介した情報提供サービスを肯定的に捉えていることなどが明らかになった。

 そして2006年度には,低価格な電子タグを実現するための経済産業省の技術開発プロジェクト「響プロジェクト」(2004年8月から2006年7月まで,日立製作所が実施)を受け,同プロジェクトで開発された「響タグ」を現状の製本ラインを通じて装着できるかどうか,またこれを活用して流通の効率化ができるかどうか,について実証実験を行った。実験の結果として,装着については2004年度の実証実験よりも向上したが依然として作業方法の検討が必要な部分があること,現状の電子タグの仕様や古紙パルプ化の処理システムではリサイクルに影響があること,プライバシー保護に関しては電子タグへ書き込む情報の運用方法を検討するとともに消費者との合意形成を図る必要があること,といった課題が判明したという。

 これらの実証実験は,主に出版業界の物流効率化の観点から行われているものであるが,図書館での利用も視野に入れた電子タグのコード体系の整備や,読み取り実験なども行われている。図書館も,今後の動向について注視していく必要があろう。

Ref:
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/index.html
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/book.pdf
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/file/media.pdf
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/hibiki1.pdf
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/hibiki2.pdf
http://www.jpo.or.jp/topics/20070523-jpoinfo.pdf
E389