E720 – LC「書誌コントロールの将来WG」によるプレゼンテーション

カレントアウェアネス-E

No.118 2007.11.28

 

 E720

LC「書誌コントロールの将来WG」によるプレゼンテーション

 

 2007年11月13日,米国議会図書館(LC)が設置した「書誌コントロールの将来ワーキング・グループ」(E634参照)が,これまでの検討の成果を著した報告書草案のプレゼンテーションを実施した。プレゼンテーションはLC内のクーリッジ講堂にLCの管理職者・スタッフを集めて行われ,その模様はウェブキャストでも中継された。報告書草案の本編は11月30日に公開される予定であるが,それに先んじてプレゼンテーション資料が暫定版として公開されており,ウェブキャストとあわせて見ることで概要を知ることができる。

 同ワーキング・グループは(1)書誌コントロール,(2)書誌宇宙(bibliographic universe),(3)LCの役割,の3つを再定義することを原則に置き,2006年11月から10名のメンバーで検討を行ってきた。その間,2007年3月,5月,7月には公開ミーティングも実施し。報告書草案・暫定版では,ワーキング・グループの議論が,次の5つの「全体の結論」にまとめられている。

  1. 書誌レコードの協同作成・共有を進め,またサプライチェーンのあらゆる過程で生産されるデータを活用して,書誌作成の効率を上げる。
  2. 価値の高い活動に努力を傾ける。とりわけ,図書館が所蔵する固有の資料へのアクセシビリティを高め,知識の創造に大きな価値を提供する。
  3. ウェブを技術基盤として位置づける。そして,「人」のみならず図書館のデータと相互作用する「アプリケーション」も,ユーザとみなす。
  4. 将来的な図書館コミュニティを,リソースの評価と質・量による分析を加えることによって位置づける。FRBR(CA1480参照)のフレームワークによってもたらされる可能性を実現するために活動しなければならない。
  5. 継続教育や評価指標の開発を通じて,図書館情報学専門職を強化する。

 この5つのまとめのそれぞれに関し,複数の勧告(recommendation)がなされている。例えば1.に関しては,(a)冗長性の縮減,(b)書誌レコード作成の責任の分担促進,(c)典拠レコードの協同作成の3つの勧告がなされている。そしてこの各々に,さらに具体的な勧告がなされている。(a)であれば,サプライチェーンの上流で入手できる書誌的データの活用や出版時目録(CIP;CA1557参照)プロセスの自動化,(b)であれば協同目録プログラム(PCC)参加館の拡大や書誌レコード共有のインセンティブの拡大,(c)であれば他機関が作成済みの典拠標目の再利用や典拠ファイルの国際化などである。1.と同様,多くの勧告がなされているのは4.で,図書館目録に対し評価の情報や利用者作成のデータを統合することやFRBRのテスト計画の開発,またそれに伴うRDA(E372E614参照)関連作業の一時中断などが挙げられている。カルホーン報告書(CA1617参照)の中で廃棄を促され議論を集めていた米国議会図書館件名標目表(LCSH)に関しては,その意義を認めながらも,件名文字列の結合をやめファセット化(E507参照)すること,他の統制語彙の利用や相互参照を行うこと,主題分析作業におけるコンピュータによる索引作成の可能性を探ることなど,ウェブでの利用・再利用に向けての最適化・改変が勧告されている。

 このほか,2.については,貴重資料や固有資料に重点を置いてアクセシビリティの向上を図るとともにデジタル化を進めること,3.については図書館の標準をウェブ環境に適合させるとともに投資利益率(ROI)を焦点に据えた標準開発を行うこと, 5.についてはエビデンスベース(CA1625参照)の構築や図書館情報学教育者とのコミュニケーションなどが勧告されている。

 ワーキング・グループでは今後の予定として,11月30日に報告書草案の本編を公開し,12月1日から15日までパブリックコメントを受け付け,2008年1月9日までに最終報告書を公開する,としている。

Ref:
http://www.loc.gov/bibliographic-future/meetings/webcast-nov13.html
CA1480
CA1557
CA1617
CA1625
E372
E507
E614
E634