E1974 – 世界図書館情報会議(WLIC):第83回IFLA年次大会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.337 2017.11.16

 

 E1974

世界図書館情報会議(WLIC):第83回IFLA年次大会<報告>

 

   2017年8月19日から25日にかけて,世界図書館情報会議(WLIC):第83回国際図書館連盟(IFLA)年次大会(E1848ほか参照)が,ポーランド・ヴロツワフの百周年記念ホールで開催された。ヴロツワフはポーランド西部に位置し,2016年の欧州連合の文化事業「欧州文化首都」に指定され,一年間を通して,ジャズや映画,演劇等の様々な文化的な催しが行われた,同国第4の都市である。IFLAによれば,今回の会議には最終的に122の国・地域から,合計3,100人の参加者があり,日本からは国立国会図書館(NDL)からの代表団8名を含む56名が参加した。なお同国での開催は,1936年と1959年のワルシャワ大会以来,3度目である。

   今回の大会は「図書館・連帯・社会(Libraries. Solidarity. Society.)」をテーマとし,247のセッション,69機関が出展した展示会,184のポスター発表等が行われた。また,大会に合わせて各分科会常任委員会等の役員会が開催されたほか,各分科会等が主催する17のサテライトミーティングが,首都ワルシャワやバルト海に面する都市グダンスク,近隣諸国で行われた。

   20日の開会式では,今大会で任期を終えるIFLA会長のシーダー(Donna Scheeder)氏(米国)や事務局長のライトナー(Gerald Leitner)氏(オーストリア)から,現在IFLAが行っている世界各国の図書館による議論を通じた将来ビジョン策定の取組“IFLA Global Vision”への積極的な参加が呼びかけられたほか,ポーランド大統領からの手紙の代読に続き,ポーランド第一副首相兼文化・国家遺産相,ヴロツワフ市長,ポーランド図書館協会会長から挨拶が述べられた。また,英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでポーランド史及びリトアニア史を研究するRichard Butterwick-Pawlikowski教授の講演の後,映像と歌,ダンスやアクロバットを織り交ぜたパフォーマンスが披露された。パフォーマンスは,歴史に翻弄されたポーランド,戦禍や水害等から復興し発展したヴロツワフの来し方行く末を紹介するもので,終了後は会場中の拍手がしばらく鳴り止まなかった。大会初の試みで開会式の様子はストリーミング中継され,9万4,859の地点から2万3,337ビューのアクセスがあった。

   また,22日の夜に野外で開催された「文化の夕べ」では,ポーランドの伝統衣装や民族舞踊が披露された。参加者全員で池の周りをポロネーズの調べにのせて踊るという企画も準備され,会場は夜更け過ぎまで賑わった。

    19日から24日にかけて開催された各セッションには,日本からも登壇者があった。護得久えみ子氏(東京子ども図書館)が,児童・ヤングアダルト図書館分科会公開セッションにおいて,同分科会が推進する児童・ヤングアダルト向け図書館サービスのベストプラクティスを共有するプロジェクトの一例として,同館の学校訪問の取組について報告したほか,角田裕之氏(鶴見大学)が逐次刊行物分科会及び収集・蔵書構築分科会合同サテライトミーティングにおいて,長塚隆氏(同)が系図・地方史分科会,アジア・オセアニア分科会及び情報技術分科会合同サテライトミーティングにおいて報告した。NDLからは,奥山裕之調査及び立法考査局調査企画課長が,8月15日から18日にかけて開催された議会のための図書館・調査サービス分科会プレコンファレンスにおいて,国会議員等に対し執筆,刊行した論文・レポートの内容を口頭で簡潔に紹介し,質疑応答等を行う「政策セミナー」の取組と今後の課題について発表した。ポスター発表では天野由貴氏(椙山女学園大学図書館),松田ユリ子氏(神奈川県立田奈高等学校),村木美紀氏(同志社女子大学),原田隆史氏(同志社大学)及び三浦太郎氏(明治大学)による計5件の発表が行われた。また,NDLの町屋大地電子情報部電子情報サービス課員が,日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)の取組(E1885参照)について,韓国国立中央図書館とともにポスター発表を行った。

    22日には国立図書館長会議(CDNL)が百周年記念ホールに隣接する四円蓋展示館(現代美術を中心に展示するヴロツワフの国立博物館の分館)で開催され,NDLの羽入佐和子館長が出席した。CDNLでは「国立図書館が大陸とコミュニティをつなぐ」というテーマのもと,ポーランド国立図書館長,ニュージーランド国立図書館長及びフランス国立図書館長から,デジタル統合を通じて文化遺産をつなげる取組が紹介され,パネルディスカッション等が行われた。

    23日に行われたIFLA総会では,IFLAの活動報告,財務報告のほか,運営理事会メンバー等の選挙結果について報告された。24日の閉会式では,2019年の大会開催地の発表が延期となり,次回の開催地であるマレーシア・クアラルンプールからの歓迎の挨拶が続いた。シーダー氏の退任挨拶の後,新会長のペレス・サルメロン(Glòria Pérez-Salmerón)氏(スペイン)が,自身のテーマを“Libraries are the motor for change”とすると挨拶し,会は閉幕した。

    今大会については『国立国会図書館月報』『図書館雑誌』で報告される予定である。なお,各セッションの予稿はIFLAの機関リポジトリ“IFLA Library”で,大会の写真はFlickrで公開されている。

総務部支部図書館・協力課・熊倉優子

Ref:
https://2017.ifla.org/
https://globalvision.ifla.org/
http://library.ifla.org/1868/
http://library.ifla.org/1702/
http://www.2017-iflaparl.sejm.pl/
http://library.ifla.org/2011/
http://library.ifla.org/1862/
http://www.cdnl.info/index.php/annual-meetings
https://www.flickr.com/photos/ifla/
E1848
E1885