E2205 – 世界図書館情報会議(WLIC):第85回IFLA年次大会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.381 2019.12.05

 

 E2205

世界図書館情報会議(WLIC):第85回IFLA年次大会<報告>

収集書誌部収集・書誌調整課・村上一恵(むらかみかずえ)

 

 2019年8月24日から30日にかけて,世界図書館情報会議(WLIC):第85回国際図書館連盟(IFLA)年次大会(E2078ほか参照)が,ギリシャ・アテネのメガロン・アテネ国際会議場等で開催された。今大会には130以上の国・地域から,3,300人以上の参加者があった。このうち日本からの参加者は61人,国立国会図書館(NDL)からは代表団9人が参加した。

 今大会は「図書館:変化への対話(Libraries: dialogue for change)」をテーマとし,250以上のセッション,66機関が出展した展示会,185のポスター発表等が行われた。

 24日に日本人の大会参加者同士の情報交換を目的とした地域会議である日本コーカスが開催された。日本コーカスの開催は今大会で2回目であり,三浦太郎氏(明治大学・日本図書館協会国際交流事業委員会委員長)の司会で,今大会の日本人参加者が常任委員・連絡委員となっている15の分科会の活動内容等が報告された。

 25日に行われた開会式は,今大会のギリシャ国内委員会の共同議長であるAlexandra Papazoglou氏(ギリシャ図書館員・情報専門家協会会長)とFilippos Tsimpoglou氏(ギリシャ国立図書館長)による「対話」から始まった。今大会で任期を終えるIFLA会長のペレス・サルメロン(Glòria Pérez-Salmerón)氏,事務局長のライトナー(Gerald Leitner)氏らの挨拶の後,大会テーマである「変化への対話」を神話から現代までのギリシャの歴史とからめて表現する文化パフォーマンスが披露された。その後,Loukas Tsoukalis氏(アテネ大学名誉教授・ギリシャ欧州外交政策財団会長)による基調講演が行われ,続いてギリシャ各地の伝統舞踊が披露された。最後に,ペレス・サルメロン氏によって開会が宣言された。

 26日に,「IFLA戦略2019-2024(IFLA STRATEGY 2019-2024)」(E2206参照)が公表された。各分科会はこの戦略に対応する形式で活動計画を立てることが推奨されている。例えば筆者が連絡委員を務めている書誌分科会では,大会期間中の2回のビジネスミーティングを通じて検討を行った結果,戦略の方向性2「専門的な実践を促進・強化する(Inspire and Enhance Professional Practice)」に紐づく活動として,全国書誌登録簿の更新,「デジタル時代の全国書誌作成機関のためのベストプラクティス(Best Practice for National Bibliographic Agencies in a Digital Age)」の後継として全国書誌のユースケース等をまとめたコモンプラクティスを公開すること等を活動計画に挙げることとなった。

 27日にスタブロス・ニアルコス文化センターで開催された国立図書館長会議(CDNL)には,参加者・随行者合わせて約100人が出席,NDLからは羽入佐和子館長,随行の水戸部由美(総務部企画課)が出席した。今回のCDNLでは“The Next Generation”をテーマに,若い世代を巻き込む又は若い世代に関係する,啓発的な活動の事例紹介や,現在と将来における国立図書館の重要性について小グループに分かれた討議・ショートムービー作成等が行われた。

 オープンセッションでは,NDLからは,青池亨(電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室)が,26日に開催された知識マネジメント分科会及びビッグデータ専門部会共催オープンセッションにおいて,次世代デジタルライブラリー(E2154参照)について報告を行った。また,佐藤従子(収集書誌部)が,27日に開催された資料保存分科会,資料保存戦略プログラム(PAC)及び貴重書・特別コレクション分科会共催オープンセッションにおいて,NDLの耐震対策について発表した。

 26日・27日に開催されたポスターセッションでは,日本からは村上晴美氏(大阪市立大学),宮原志津子氏(相模女子大学),村木美紀氏(同志社女子大学),元木章博氏(鶴見大学図書館),角田裕之氏(鶴見大学)らと中国科学院国家科学図書館との共同研究グループ,星野ゆう子氏(鶴見大学)及び元木氏,佐藤翔氏(同志社大学)らのグループによる7件の発表が行われた。

 今大会に合わせ8月20日から23日,30日から31日にかけて,ギリシャ国内各地及び近隣7か国で22のサテライト・ミーティングが開催された。NDLからは相原雅樹(利用者サービス部科学技術・経済課)が,23日にギリシャ国立図書館で開催された逐次刊行物分科会・国立図書館分科会共催サテライト・ミーティングで学協会の灰色文献の収集と提供について発表した。

 28日に開催された総会では,ペレス・サルメロン氏から2年間の任期の総括が行われた後,ライトナー氏が1年間の活動を報告した。また,今大会期間中にIFLA会員数が150か国1,500機関を超えたことが発表された。さらに,2020年から2022年までの年会費が決議されるとともに,運営理事10人が確定となった。

 29日の閉会式では,最もインパクトのあった分科会に贈られるIFLA Dynamic Unit and Impact Award,ベストポスター賞,大会期間中に最も印象に残ったツイート等の表彰が行われた。また,ペレス・サルメロン氏から新会長のマッケンジー(Christine Mackenzie)氏への交代式と新理事会メンバーの紹介があった。さらに,2021年の年次大会はオランダ・ロッテルダムで開催されることが発表された。次回2020年の年次大会開催地であるアイルランド・ダブリンの紹介の後,マッケンジー氏による挨拶で閉幕となった。

 今大会については『国立国会図書館月報』『図書館雑誌』等でも報告される予定である。各セッションの予稿の一部はIFLAの機関リポジトリ“IFLA Library”で,大会の写真はFlickrで公開されている。

 次回の年次大会は「啓発する,関わる,可能にする,つなげる(Inspire, Engage, Enable, Connect)」をテーマに,2020年8月15日から21日にかけて開催される。

Ref:
https://2019.ifla.org/
https://2019.ifla.org/ifla-wlic-2019-a-dialogue-for-change-brings-the-transformation-of-libraries/
https://www.ifla.org/strategy
https://www.ifla.org/node/2216
https://www.ifla.org/node/7858
https://2019.ifla.org/cdnl-2019-and-the-next-generation/
https://lab.ndl.go.jp/dl/
https://2019.ifla.org/conference-programme/poster-sessions/
https://www.ifla.org/node/92421
https://www.ifla.org/node/92527
E2078
E2206
E2154