E1723 – 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2015/8/20現在)

カレントアウェアネス-E

No.291 2015.10.29

 

 E1723

東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2015/8/20現在)

 

 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況について,本誌での既報(E1672ほか参照)に続き,2015年5月上旬から8月中旬までの主な情報をまとめた。 

●被災地の図書館等の活動

 7月22日,石巻専修大学図書館が,アメリカの図書館司書ゴールデン(Vincent Golden)氏から,同館の「テイラー文庫」に図書を受贈した。なお,「テイラー文庫」とは,米国出身で,石巻市内の小中学校で英語教師をつとめていた,テイラー・アンダーソン氏が震災で亡くなり,その遺志を継いで設立された「テイラー・アンダーソン記念基金」の事業の1つとして,同館に2015年3月11日,設立されたものである。
http://www.senshu-u.ac.jp/ishinomaki/ilibif/lib/info.html 

●デジタルアーカイブに関する動き

 4月28日,日本赤十字社発行の「東日本大震災-救護活動から復興支援までの全記録-」が,赤十字原子力災害情報センターデジタルアーカイブで公開された。
http://ndrc.jrc.or.jp/notice/6347/ 

 国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)に,新規コンテンツとして以下が追加された。

  • 「参議院インターネット審議中継」で公開されていた第177回国会の動画のうち,2011年3月11日から3月25日までの間に開催された本会議及び委員会の審議中継動画(5月8日)
  • 認定NPO法人山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)が「311ドキュメンタリーフィルム・アーカイブ(山形国際ドキュメンタリー映画祭)」のウェブサイトにおいて発信する東日本大震災の記録映画とその作品情報(5月12日)
  • 宮城県及び県下の35市町村が,同県内の東日本大震災の記録を収集して構築した「東日本大震災アーカイブ宮城」(6月19日)
  • いわき明星大学震災アーカイブ室が運営する「はまどおりのきおく-未来へ伝える震災アーカイブ-」(6月29日)
  • 厚生労働省動画チャンネル(YouTube)に掲載されている東日本大震災関連の除染等に関する動画(7月6日)
  • 浦安市の「浦安震災アーカイブ」(7月6日)
  • 政府インターネットテレビ及び首相官邸(YouTube)に掲載されている東日本大震災関連の動画(8月14日) 

 また,新規コンテンツ以外では,6月29日,国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)で,2015年5月現在の情報を盛り込んだパンフレット「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ ひなぎく」を公開した。その他,7月14日には2014年11月30日に閉鎖された,ひなぎくの連携アーカイブであった「陸前高田震災アーカイブNAVI」のコンテンツのうち,7団体11名の著作権者から,新たにひなぎくで資料を公開する許諾を受け,全ての対象資料を公開した。
http://kn.ndl.go.jp/information/386
http://kn.ndl.go.jp/information/388
http://kn.ndl.go.jp/information/392
http://kn.ndl.go.jp/information/390
http://kn.ndl.go.jp/information/396
http://kn.ndl.go.jp/information/399
http://kn.ndl.go.jp/information/406
http://kn.ndl.go.jp/information/407
http://kn.ndl.go.jp/information/402
http://kn.ndl.go.jp/information/394
http://kn.ndl.go.jp/static/about

 5月15日,赤十字原子力災害情報センターのデジタルアーカイブで,日本赤十字社福島県支部,福島赤十字病院,福島県赤十字血液センターなどとともに行なった東日本大震災と福島第一原発事故に関する救援活動及び福島県内における復興支援活動についての記録集が公開された。
http://ndrc.jrc.or.jp/notice/6390/

 6月15日,宮城県が県下の35市町村と連携・協力して構築した,同県に関する東日本大震災関連資料のデジタルアーカイブ「東日本大震災アーカイブ宮城」を公開した。
https://kioku.library.pref.miyagi.jp/index.php
https://kioku.library.pref.miyagi.jp/miyagi/index.php/107-2015-06-15-05-11-43.html

 7月1日,千葉県の浦安市が,東日本大震災に関連した行政文書・写真・動画のほか,学術資料や調査記録,市民から集めた体験談などを収録した「浦安震災アーカイブ」を公開した。
http://urayasu-shinsai-archive.city.urayasu.lg.jp/
http://urayasu-shinsai-archive.city.urayasu.lg.jp/notice/

 7月17日,NPO法人・情報公開クリアリングハウスが,福島第一原発事故とその後の対応に関わる,内閣府や原子力安全委員会,福島県などの行政機関の公文書をアーカイブ化した「福島原発事故情報公開アーカイブ」を公開した。
http://www.archives311.org/
http://clearinghouse.main.jp/wp/?p=1025 

●記録を残す活動・伝える活動

 6月25日,大船渡津波伝承館が,ハワイ州ヒロ市のPacific Tsunami Museumと,広報等に関して相互に協力することなどについて協定を締結した。
http://ofunato-tunami-denshokan.jimdo.com/2015/06/27/pacific-tsunami-museumと協力協定を締結/ 

●資料保存に関する動き

 8月12日,東京都立中央図書館が,岩手県陸前高田市立図書館所蔵の被災資料の救出・修復・再生の記録動画(日本語版及び英語版)をYouTubeで公開した。
https://www.youtube.com/watch?v=2YT0uGFYhAc
https://www.youtube.com/watch?v=q4M-N3K3IpY 

●展示

 5月16日から27日まで,茨城大学水戸キャンパス図書館で,双葉町で撮影したモノクロ写真の展示「HOME TOWN-二人のイギリス人が伝える“ふるさと双葉”-」が開催された。
http://www.icas.ibaraki.ac.jp/2015/05/futaba-hometown/
https://www.facebook.com/ibadai.mito/posts/487114551440220 

 5月31日から7月30日まで,岩手県立図書館で,復興の取り組みへの理解と関心を深めてもらうために岩手県が制作したポスターを展示する,「岩手県復興ポスター展」が開催された。
https://www.library.pref.iwate.jp/info/evecale/minitenji/201506_mini_hukkou.html

 6月から,東北学院大学図書館の中央図書館で,震災関連資料の紹介と共に,2011年3月11日の当日の様子や再開館までに行われた復旧作業の写真資料等が展示された。
http://www.lib.tohoku-gakuin.ac.jp/page/tenzi/1506_ts.html

 7月22日から7月27日午前まで,宮城教育大学附属図書館で,震災以前,震災の3年後,2014年3月にそれぞれ撮影された宮城県内沿岸部の航空写真などを展示する震災前後パネル展が開催された。
https://www.facebook.com/MUELibrary/posts/468256410022515 

●イベント,講演会,講習会など

 5月8日,東京都の科学技術館で,アート・ドキュメンテーション学会による「第55回デジタルアーカイブサロン」が,「東日本大震災から4年目を迎えた東北の今。復興事業の現状と未来」をテーマに開催された。
http://d.hatena.ne.jp/JADS/20150505/1430810781

 6月20日,福島県文化財センター白河館で,東日本大震災で被災した文化財の保全方法について,実習を交えながら学ぶ平成27年度まほろん文化財研修特別研修「文化財保全ワークショップ」実施された。
http://www.mahoron.fks.ed.jp/bosyu/2015_bunkazaikenshu_2.htm

 6月21日,東京・大阪・福岡の3つの会場で,「saveMLAK報告会2015~社会教育・文化施設の救援・復興支援~」が開催され,震災後4年間のsaveMLAKの取組みの振り返りと今後の活動についての議論などが行われた。
http://savemlak.jp/wiki/saveMLAK:Event/20150621

 7月3日,日本図書館協会で,「平成27年度第1回東日本大震災被災地図書館情報交換会および支援情報交換会」が開催され,岩手,宮城,福島の県立図書館,saveMLAK,シャンティ国際ボランティア会,日本親子読書センター,国立国会図書館,日本図書館協会震災対策委員会が参加した。
http://www.jla.or.jp//tabid/262/Default.aspx?itemid=2666

 7月6日,クリーク・アンド・リバー社が,5月23日に関西学院大学図書館ホールで行われた,被災地域の方言の再興及び地域コミュニティーの再生に寄与することを目的とした,2014年度文化庁委託事業の活動報告会「方言の保存と継承-3.11被災地における取り組み-」の動画を公開した。
http://www.cri.co.jp/news/press_release/2015/20150706001262.html
https://www.youtube.com/playlist?list=PLcho9dNQTLbeLvVlak32eJjb7cH8xOXN_

 7月27日,国立国会図書館が,仙台市情報・産業プラザで,東日本大震災に関するアーカイブ活動支援の一環として,講習会「東日本大震災に関する書類・写真・動画の整理・保存講習会~被災支援活動の経験・ノウハウを活かすために~」が開催された。
http://kn.ndl.go.jp/information/380
E1708 

●刊行物

 5月10日,『saveMLAKニュースレター』第37号が刊行された。
http://savemlak.jp/savemlak/images/f/fd/saveMLAK-newsletter-201505.pdf 

 5月13日,岩手県宮古市は,盛岡市西部公民館に所属する点字ボランティア団体「西部点字パソコンサークル・ステップ」が作成した『三陸鉄道情熱復活物語』と『三陸の海』の点字本兼墨字本をそれぞれ2部ずつ,三陸鉄道株式会社から受贈した。
https://www.facebook.com/city.miyako/posts/1848671972025648
https://twitter.com/miyako_city/status/598388965360607232

 6月18日,福島県立図書館が「東日本大震災福島県復興ライブラリー」の資料を実際に読み,感じたことを伝える「ブックガイド」のNo.14を公開した。
https://www.library.fks.ed.jp/ippan/fukkolib/pdf/guide14.pdf

 『図書館評論』56号(2015年7月)に加藤孔敬による「図書館発・震災復興商観光業活動 : 震災資料を活用した取り組み」が掲載された。
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I026613033-00

 『国立国会図書館月報』651号(2015年7月)に,東北大学青葉山キャンパス災害科学国際研究所棟1階多目的ホールで1月に開催された「東日本大震災アーカイブシンポジウム―4年目の震災アーカイブの現状と今後の未来(世界)へ繋ぐために」の概要をまとめた記事が掲載された。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9422688_po_geppo1507.pdf?contentNo=1

 『図書館雑誌』109巻8号(2015年8月)に千葉直美による「東日本大震災と「テイラー文庫」 : 犠牲となったアメリカ人女性の夢をつないで」が掲載された。
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I026633597-00 

●被災地を支援する活動

 7月3日から5日まで,北海道江別市の大麻銀座商店街で,「江別港ブックフェス 初夏の陣」が開催され,売り上げが被災地の図書館の復興支援に充てられる古書市もイベントの一環として開催された。
http://ameblo.jp/booksharing/entry-12044658967.html 

 7月13日,大阪学院大学が,学生による東日本大震災復興支援活動として気仙沼市の小中学校に読書感想文の課題図書を寄贈するに当たり,贈呈式がとり行われた。
http://www.u-presscenter.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=8226

関西館図書館協力課調査情報係