カレントアウェアネス-E
No.288 2015.09.10
E1708
東日本大震災に関する書類・写真・動画の整理・保存講習会
国立国会図書館(NDL)では,政府の「復興構想7原則」や「東日本大震災からの復興の基本方針」等を踏まえ,2013年3月7日から,東日本大震災に関する記録を一元的に検索できるポータルサイト「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ」(愛称「ひなぎく」)を公開している。東日本大震災の記録を国全体で収集・保存・公開するため,各種機関の運営するアーカイブと「ひなぎく」の連携(2015年7月末現在,44件のアーカイブと連携)を進める一方,震災記録のアーカイブ活動の支援も行っている。
そうした支援の一環として,NDLでは,2013年以来毎年,アーカイブの専門家による書類や写真等の整理・保存についての講習会を開催してきた。主な対象は,ボランティア団体,NPO,行政機関等で被災地支援活動,復興事業に携わっている方々である。経験を共有しノウハウを活かすためにも,活動の過程で生じる文書や記録写真等の整理・保存を進めることが重要である。講習会は,ボランティア団体等が,各団体のそうした記録を整理・保存していく活動の一助となり,さらに,東日本大震災に関する記録の保存活動の拡大に寄与することを目指して開催している。本稿では,2015年に行われた「東日本大震災に関する書類・写真・動画の整理・保存講習会~被災支援活動の経験・ノウハウを活かすために~」の概要を紹介する。
2015年は,「ひなぎく」の連携先でもある,せんだいメディアテーク(「3がつ11にちをわすれないためにセンター」を開設)と長岡市立中央図書館文書資料室(「長岡市災害復興文庫」を開設)から講師を招き,7月27日に仙台市情報・産業プラザで開催した。参加者は48名であった。
1つ目の講義,せんだいメディアテーク企画・活動支援室の北野央氏による「せんだいメディアテークにおける写真・動画の収集と保存,そして資料化」では,「3がつ11にちをわすれないためにセンター」で市民,専門家,センタースタッフ等が協働して行っている記録・情報発信のプロセスが紹介された。未編集の素材である写真に,基本的なメタデータとともに,記録者とスタッフがエピソードを付け加え,ブログ記事や展示用パネル等に資料化し利活用していくことで,素材を他者に伝えるための道具に育てていくといった具体例が示された。
2つ目の講義,長岡市立中央図書館文書資料室室長の田中洋史氏による「長岡市災害復興文庫の構築と発信-中越大震災から東日本大震災へ-」では,災害対応の経験・教訓をどのようにつないでいくかをテーマに,中越地震及び東日本大震災の際に長岡市内に開設された避難所に関する資料についての収集・整理・保存の活動と,「長岡市災害復興文庫」が構築された経緯が紹介された。
続いて行われた田中氏によるワークショップ「東日本大震災避難所資料の整理と保存」では,長岡市立中央図書館文書資料室が資料整理ボランティアと協働で行っている目録作成作業を,参加者48人が7グループに分かれ,避難所資料のレプリカを用いて体験した。教材としたレプリカは,被災者向けの掲示物や避難所本部の運営事務文書などで,通常の出版物と異なり,目録作成に必要な基本的な情報が欠けていることが多く,講師が各グループの質問に個別に答えながら作業が進められた。
講義とワークショップは,講師の経験に基づく実践的な内容で,参加者のアンケート結果でも,高い満足度を得た。質疑応答の時間も含め,3時間半にわたる講習会だったが,もっと時間をかけて聴きたかったとの声も多く寄せられた。
2016年3月には,発生から丸5年を迎え,東日本大震災に関する記録の散逸が懸念されている。今後も,東日本大震災の記録の保存・伝承に,より一層寄与できるように,アーカイブ活動を支援していきたいと考えている。
過去の講習会の配布資料や映像資料は,「ひなぎく」内のページで提供している。ぜひごご覧いただきたい。
電子情報部電子情報流通課・河内明子
Ref:
http://kn.ndl.go.jp/
http://kn.ndl.go.jp/dafa9b1d-3516-4e83-9934-99ca58267649
http://kn.ndl.go.jp/4a25de78-6893-4396-b290-4163a120d827
http://recorder311.smt.jp/
http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/?page_id=568
http://kn.ndl.go.jp/information/380
http://kn.ndl.go.jp/information/310
http://kn.ndl.go.jp/information/251