E1714 – 第24回京都図書館大会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.289 2015.10.01

 

 E1714

第24回京都図書館大会<報告>

 

 2015年8月17日,第24回京都図書館大会が同志社大学寒梅館ハーディーホールで開催された。この大会(E1337参照)は,京都府内において館種を超えた図書館関係者の連携を図りともに研鑽を積むことを目的として,年1回開催されているものである。 

 今回は「インターネット資源を活用する~オープンデータと図書館~」をテーマに,図書館機能の新しい形が模索されるなかで,情報流通に革新をもたらすとして近年注目されているオープンデータを議論の中心にすえ,2つの特別講演と2件の事例発表がおこなわれた。

 まず立命館大学教授の常世田良氏より「図書館の機能を見直す~課題解決型サービスとオンライン資源~」と題した講演が行われた。常世田氏は,日本の社会が与えられた課題を所与の情報や手法によってこなす「キャッチアップ型」から「自己判断・自己責任型」へと変容していることを指摘した。さらに図書館に求められる課題解決型サービスについて,ビジネス支援サービスや医療健康情報サービスなど各地の先進事例を挙げて紹介した。そのなかで,サービス提供の要点をオープンデータの手法と絡めて解説し,情報が氾濫している今日こそナビゲータとしての資質を持つ司書の役割が重要であると説き,あらゆる場所で情報の入手を可能にするためには,地方にこそ質の高い図書館が必要であると述べた。

 続いて国立情報学研究所准教授の大向一輝氏より「オープンデータをつかう図書館,オープンデータをつくる図書館」をテーマに講演が行われた。オープンデータとは何か,現在に至るまでの背景を,国内外の動向とともに解説された。また図書館におけるオープンデータへのアプローチについて,図書館が自らデータを作成することと利用者のデータ作成への支援の2種類を述べ,前者では「ししょまろはん」と「残念な日本地図」,後者ではWikipedia Town(CA1847参照)を紹介した。そして見知らぬ他者に情報を委ねることの難しさに触れながらも,まずは小さなことから始めて道筋を作っていくことが重要であると述べた。

 事例発表では,まず国立国会図書館の福山樹里氏より「国立国会図書館のデータ利活用の取組~Linked Open Dataを中心に~」と題し,福山氏が担当する業務内容に関する発表がなされた。同館が扱う膨大なデータを,ウェブ上で扱いやすい形で提供するという業務を,リソースにあわせて可能なことと,調整を要することとに切り分け,的確に進めていく状況がユニークなスライドとともに説明された。

 「ししょまろはん」代表の是住久美子氏からは「京都府立図書館の自主学習グループによるオープンデータへの取り組み」と題し,自主学習グループ「ししょまろはん」での取り組みが紹介された。図書館員がオープンデータを学び,実際に利用して,「京都が出てくる本のデータ」,「京都レファレンスマップ」を作成したほか,京都まちあるきオープンデータソンに協力するなど,様々な情報の発信を行っていることが報告された。今後は「ししょまろはん」での取り組みを活かし,京都府立図書館の職員として情報のオープン化を積極的に働きかけていきたいと述べた。

 今大会では様々な館種から180名の参加があり,オープンデータという新しい動向に対する関心の高さが感じられた。いずれの講演,報告とも非常に示唆に富むものであった。質疑応答ではデータベースの広報に関する議論や,オープンデータの使用実態の把握が困難なことを前提に,成果をどのようにとらえるかといった議論があり,参加者にとって有意義な大会となったことがうかがえた。図書館が書籍を中心としながらも「情報」を扱う機能を持つ以上,今後オープンデータを自ら創り出していく必要があるということを感じさせる大会となった。

京都府立図書館・望月佑梨絵

Ref:
http://www.library.pref.kyoto.jp/renkyo/taikai/taikai.html
http://libmaro.kyoto.jp
http://cheese-factory.info/
E1337
E1675
CA1847
CA1825