CA806 – トランザクション・ログ・アナリシス:より良いOPACを目指して / 大塚奈奈絵

カレントアウェアネス
No.153 1992.05.20


CA806

トランザクション・ログ・アナリシス
−より良いOPACを目指して−

オンライン検索の大きな利点の一つに,検索システムの利用者の検索過程をモニターして記録し,その結果を分析して検索システムを評価できるという点がある。トランザクション・ログ・アナリシスとよばれるこの方法は,最近では既成のOPAC(オンライン目録)システムに広く組みこまれるようになり,様々な図書館でOPACの改良点を探るために利用されている。

1989年に設置されたネバダ大学図書館のOPAC,WolfPACの調査では,1989年11月1日午後8時から翌2日午後8時までの24時間に行われた合計6,118回の検索を分析した(表)。項目別にみると,件名の検索が全体の約半数を占め,ついで,書名(19.32%),著者(13.35%)という順序であった。なお,LCカード・ナンバー等を用いた検索(表の「その他」)が18.00%であった。

検索キー
検索数
(%)
失敗数
(%)
成功数
(%)
失敗した検索の原因
件  名
3,018
667
2,351
LC件名以外の語で検索420件(62.97%),ミスタイプ155件(23.24%),ヒット無し71件…
(49.33)
(22.10)
(77.90)
著  者
817
250
567
ヒット無し144件(57.60%),ミスタイプ45件(18.00%),姓と名の間違い38件(15.20%)…
(13.35)
(30.60)
(69.40)
書  名
1,182
485
697
ヒット無し300件(61.86%),件名・書名の誤り111件(22.89%),ミスタイプ69件(14.23%)…
(19.32)
(41.03)
(58.97)
そ の 他
1,101
300
801
 
(18.00)
(27.25)
(72.75)
総  計
6,118
1,702
4,416
 
(27.82)
(72.18)

検索が成功しなかった(データがヒットしなかった)のは1,702件(全体の27.82%)で,項目別にその原因を分析してみると,興味深い結果が得られた。例えば,件名(subject)の検索で成功しなかった667件のうち420件(62.97%)はLCの件名標目表に無いワードで検索したことが原因であった。これは,検索メニュー画面の選択肢では

A >AUTHOR

T >TITLE

S >SUBJECT

:

:

という表示がなされているが,多くの利用者は図書の主題(subject)がLCの件名(subject)標目で表現されていることを知らないため,端末機の近くにLCの件名標目表が置いてあるにもかかわらず,これを利用して検索タームを確認しなかったからであると考えられる。従って,subjectによる検索の開始画面に,LCの件名標目表の使用を明示すれば,このような失敗はある程度防ぐことができる。

また,同様に,主題を表すフリーワードとして書名中のワードを主題検索に利用することができる旨を表示することも必要である。

WolfPACの調査では,この他にも,ミススペリングなどによる検索の失敗が観察された。

ネバダ大学図書館では,この調査結果をもとに,OPAC画面の表示を工夫してゆくことを試みている。

カウンターで利用者に接していると,図書館の目録の構成や配列法が判らないために,所蔵している資料を探しだせない利用者がかなり多いことを感ずる。トランザクション・ログ・アナリシスによって,カード目録や冊子目録では不可能だった利用者の検索行動を知り,より使い易いシステムを作り出してゆくことが可能になってきている。

大塚奈奈絵(おおつかななえ)

Ref: Zink, Steven D. Monitoring user search success through transaction log analysis: the WOLFPAC example. RSR 19 (1) 49-56, 1991