CA1139 – 米国議会図書館本館が新装オープン / 山田邦夫

カレントアウェアネス
No.216 1997.08.20


CA1139

米国議会図書館本館が新装オープン

米国議会図書館(LC)では,議会建築局の監督下,10年以上にわたった本館(1980年よりトーマス・ジェファソン・ビルディングと呼称。以下「ジェファソン館」)の修復・近代化が完了し,この5月1日から再開の運びとなった。

1890年代の理想主義とオプティミズムのモニュメントとされるこのジェファソン館の設計は,1873年の国内設計競技による。着工は遅れに遅れて1888年となり,開館したのは1897年11月だった(のちアダムズ館,マディソン館が建設され,現在は3館体制)。それまでLCは議事堂内にあった。「開館当時はアメリカで最も美しい公共建築物と呼ばれたものだ」とビリントン館長が言うこのイタリア・ルネサンス様式の建物は,大理石の円柱,ブロンズ像,石膏像,モザイク床,天井装飾,ステンドグラス窓,壁画などに彩られ,学問,知識,人間理解を讃える寓意に満ちたデザインがほどこされている。

今回の改修工事は,第1期(1986年9月−1989年12月)と第2期(1991年9月−1994年8月)にわたって行われ,第2期完了後は館内の整備が行われた。改修費用は,同時に改修がなされた隣接のアダムズ館と合わせて,8,150万ドルが1984年に計上され,さらにそれ以降1,000万ドルが充当された。ちなみに1897年当時のジェファソン館の建設費用は610万ドル,1996年時点換算で1億1,530万ドルだった。

ジェファソン,アダムズ両館において改善ないし最新化されたものとしては,エアコンシステム,電気設備,照明装置,データ通信システム,給水システム,スプリンクラーなど防火施設,保安システムなどが,建築物として現行の健康や安全などに関する諸基準や最新の業務環境に適合したものに改修された。また窓,壁,床,天井ほか各所を補修,洗浄,再仕上げして,劣化を防ぎ建物を保全するようにするとともに,壁,天井の劣化の進んだ美術的装飾の修復も行われた。ジェファソン館中央閲覧室のカード・カタログは撤去され,そのあとに閲覧席が増設される一方,機械目録室が拡充され,アダムズ館にも利用者機械目録室が設けられた。

中央閲覧室についてはさらに,閲覧用,レファレンス用の机などの木製品が再仕上げされ,新しい閲覧机は既存のものと同じデザインで作られた。閲覧机はすべて配電されて,利用者が自分のコンピュータを持ち込めるようになった。壁,天井などの彩色は,塗料を剥がしてみてオリジナルの色を確定した上で修復された。

このように,最新の設備を整える一方で,オリジナルの美術工芸を細心の注意で保存修復する努力が払われており,例えばスプリンクラー・ヘッドや通信ケーブルは,見えないように取り付けて,オリジナルの装飾を損なわない配慮がなされている。

ジェファソン館再開に合わせて,LC各部所からアメリカ史に関する貴重なコレクションを集めた常設展「議会図書館の至宝展」が開かれる。また新装なったビジターズ・センター,拡張したギフト・ショップ,90席の案内ビデオ室,各種のコレクション・ルーム,ギャラリーなどが設けられる。

山田 邦夫(やまだくにお)

Ref: A testimonial to steadfast support. LC Inf Bull 56 (3) 54-60, 1997