CA1059 – 法律情報ネットワーク:GLIN / 吉川博史

カレントアウェアネス
No.200 1996.04.20


CA1059

法律情報ネットワーク−GLIN−

インターネットを通じ,いながらにして世界各国の法律を検索できる――米国議会図書館(LC)の法律図書館(用語解説T9参照)を中心に,世界各国の協力の下に現在構築の途上にあるGLIN(Global Legal Information Network)はそのような夢を実現しようとするものである。

GLINは,LC法律図書館のスタッフが,官報に掲載されていても索引がついていないため,官報で法律を検索するのが難しい国々の法律を検索するためのレファレンス・ツールとして発足した。1950年にできた最初の索引は,ラテンアメリカの国々に照準を合わせたもので,カードファイル方式のものであった。今日では,GLINはアメリカ,アフリカ,ヨーロッパ,アジアの国々を含み,各国の制定法や規則に関して,索引ばかりでなく,本文自体も収録したデータベースを構築している。

GLINのシステムは次のようなものである。法律の原文と抄録とは参加国によって入力され,FTPというインターネットの機能を用いて法律図書館内にあるコンピュータに届けられる。法律図書館ではまず内容がチェックされ,それからLCの抄録・索引担当者によって英語の要旨及び索引が付与される。こうして作成されたデータはWWW/MOSAICによりアクセス可能となる。この場合のアクセスは参加国に限定されるが,抄録だけなら,SCORPIOのファイルを検索することによってLC MARVEL経由で誰でもアクセスすることができる。

GLINプロジェクトのプロトタイプはLCが開発したものであり,索引の基礎として用いられる法律シソーラスは法律図書館が開発・維持し,研修もLCが行うなど,GLINプロジェクトは専らLCによって担われてきたと言えるが,LC自身は互いの協力関係の下で行われる共同事業としてプロジェクトを位置づけている。

1995年末までに,アメリカ,アフリカ,ヨーロッパ,アジアの計15カ国(アルゼンチン,メキシコ,ブラジル,ポーランド,ウクライナ,ハンガリー,リトアニア,クウェート,モーリタニア,パラグアイ,ウルグアイ,チェコスロバキア,韓国,エジプト,ニカラグア)からの代表者が,GLINを利用するための研修を終えていることになっている。

1995年9月25日から27日にかけて,GLINの参加国の代表が一堂に会し,情報交換を行う会議が開催された。参加者たちはLCのビリントン館長や法律図書館長メディナ(Rubens Medina), プロジェクトマネージャのコズラ(Nick Kozura) らに歓待された。この会議では,各国がGLINにまつわる経験を報告し,法律の分野における技術的進歩を開示する研究機関であるTechCenter 21を法律図書館内に新設することが検討された。

法律図書館は,ネットワークを拡張するためにGLINの新たな参加国を募集しており,米国以外の立法機関からの問い合わせを歓迎している。GLINが地球規模の法律情報ネットワークとして有効に機能する日は近いと思われる。

吉川 博史(よしかわひろふみ)

Ref: Legal networking: Global Legal Information Network links databases worldwide. LC Inf Bull 54(12) 259-261, 1995.6.12
At‘GLIN Central’: members of Global Legal Information Network meet at LC. LC Inf Bull 54(22) 483-484, 1995.12.11