カレントアウェアネス-E
No.102 2007.03.14
E615
マンガの選書のために: レイティングシステムの新たな動き
米国では,日本のマンガに対する認識が深まりつつあり,図書館での所蔵・提供を行う図書館が増加しているという。これに伴い,マンガの暴力的な言葉・表現や,性的な内容が,特に児童・ヤングアダルトサービスを担当する図書館員の間で議論になっており,対象年齢がわかりやすいようレイティングシステムを求める声も多い。近年では表紙に対象年齢を明示している出版社もあるものの,映画やゲーム業界とは異なり判断基準が標準化されているわけではなく,またその指標も明示されていないなど,利用する上では不十分であると指摘されていた。
この現状を打開するために,米国で日本のマンガを翻訳・販売しているTOKYOPOP社は,2007年2月20日,マンガの対象年齢をより詳細に記述するレイティングシステムを整備し,2007年9月から同社の出版物に導入すると発表した。同社はこのレイティングシステムを,マンガ業界共通の判断基準として業界内の標準化を図っていく意向のようだ。
同社は北米に「右開き」のマンガ市場を開拓したパイオニアで,北米でのシェアは40%を占める。またこのレイティングシステムの整備にあたっては,ノースカロライナ州シャーロット・メックレンバーグ郡公共図書館でティーン向けサービスの主任を務める司書であり,マンガを使って若者の読み書き能力向上の支援を呼びかける“Getting Graphic!”の著者としても知られゴーマン(Michele Gorman)を顧問に迎え,専門家の意見を反映しようとしている。このことは米国図書館協会(ALA)ヤングアダルト図書館サービス協会(YALSA)のブログでも早速取り上げられており,好意的に評価されている。
同社のレイティングシステムは,マンガで使われている言葉や暴力・性的表現,肌の露出度などについて43の指標を定め,それをもとに,対象年齢を(All Age; 6歳以上),Y(Youth; 10歳以上),T(Teens; 13歳以上),OT(Older Teen; 16歳以上),M(Mature; 18歳以上)の5段階で分類するというものである。対象年齢の判断に当たっては,担当編集者がまず,指標と照らし合わせてマンガをチェックした上で,同社と外部の編集者からなるレイティング委員会に諮り,決定するという。このレイティングシステムは,図書館職員や教師,子どもを持つ親やマンガ業界関係者も参照できるよう同社のウェブサイトで公開されており,注目を集めている。
Ref:
http://www.tokyopop.com/618.html
http://www.tokyopop.com/news/rating_flyer.pdf
http://www.comixlibrarian.com/
http://www.publishersweekly.com/article/CA6417362.html
http://blogs.ala.org/yalsa.php?title=new_rating_system_by_tokyopop
http://www.schoollibraryjournal.com/article/CA6419837.html
http://www.esrb.org/