カレントアウェアネス-E
No.99 2007.01.31
E595
フォークソノミーの応用可能性: 図書館OPACへの応用
日本でも,“はてなブックマーク”などのフォークソノミー(folksonomy)を取り入れたソーシャルブックマーク・サービスが普及し,ウェブ上のコンテンツにタギング(タグ付け)して情報整理を行う人が増えている。「folksonomy」とは「folks」(民衆)と「taxsonomy」(分類)を併せた造語であり,利用者自身がコンテンツを分類し,索引の付与を行う仕組みである。利用者の付けたタグが共有されることにより,いわば民意により分類体系が構築され,有効な情報探索支援ツールとなりうる。
海外では,Yahoo!が買収したソーシャルブックマークサイト“del.icio.us”や画像共有サイト“Flickr”,Googleが買収した動画共有サイト“YouTube”,さらにはウェブページ・アーカイビングサービスの“Furl”,nature.comの医・科学の参考文献共有サイト“Connotea”などが,人気のサービスとなっている。
タグは,情報を分類するためだけに使われるのではない。誰が,どのようなコンテンツに,どのようなタグを付けたのかが共有されているため,タグを介して同じ関心を持った他の利用者とつながることができる。また他者の利用しているサイトやその利用しているタグを学ぶことで,情報探索を効率的に行うこともできるようになる。さらにタグには,“to read”,“to do”など,コンテンツに対して事後的に行う行動を印付けておいたり,“cool”など,感覚的な表現で印付けるような使い方もされている。このような時間・感情の要素は,もちろん従来の分類法にはない要素である。
米国の図書館では,フォークソノミーを,公共図書館の目録システムを補強する手段として取り入れようとする提案や実践が始まっている。「公共図書館目録における協同タギングの利用」と題する発表では,書誌データに対する利用者のタグ付けを取り入れることで,利用者のオンラインコミュニティを構築したり,タグの情報から読書リストを作成したりすることを提案している。また,先日リリースされたミシガン州アナーバー(Ann Arbor)地域図書館の蔵書検索システム“SOPAC”(Social OPAC)では,アカウントを持った図書館利用者が,書誌データにタグをつけることができるようになっており,それを活用したタグクラウドなどの表示方法などを実装してみせている。
従来図書館が主に依拠してきた統制語彙による分類・索引を補うものとして,フォークソノミーの可能性は注目される。
Ref:
http://b.hatena.ne.jp/
http://del.icio.us/
http://www.flickr.com/
http://www.youtube.com/
http://www.furl.net/
http://www.connotea.org/
http://eprints.rclis.org/archive/00008315/
http://www.ala.org/ala/lita/litamembership/litaigs/authorityalcts/Spiteri-AN2006.ppt
http://www.aadl.org/catalog
http://www.aadl.org/sopac/tagcloud