カレントアウェアネス-E
No.515 2025.12.18
E2849
「本のあるとこネットワークなごや」について
名古屋市鶴舞中央図書館・畑中義国(はたなかよしくに)
●「本のあるとこネットワークなごや」とは
「本のあるとこネットワークなごや」とは、名古屋市にある書店や図書館など「本のあるところ」がつながって、読書活動の推進に取り組むプロジェクトである。地域の人が本に触れる機会を作り出したり、読書の楽しさを伝えていくことを目標に取り組んでいる。
●開始までの経緯
名古屋市図書館では以前から折に触れ書店等と連携した取り組みを行っていた。2024年度に市の新規事業として、「図書館における赤ちゃんへの絵本プレゼント事業」が始まり、絵本は地域の書店から購入することになった。その際、子どもの読書活動推進に関する取り組みの協力依頼を鶴舞中央図書館から書店に行った。
その後、この事業から独立・発展させ、市図書館と地域の書店とで協働プロジェクトを立ち上げることを計画し、愛知県書店商業組合名古屋部会と2度話し合いの機会を設け、協働の内容について意見交換を行ってきた。その結果、組合からも賛意が得られたため、2025年3月28日より「本のあるとこネットワークなごや」を立ち上げることになった。
●「本のあるとこネットワークなごや」の取り組み内容
取り組みとしては主に2点ある。1点目は図書館ウェブサイトで地域の書店マップを公開すること、2点目は市図書館と地域書店で協働の取り組みを行うことである。
1点目の地域の書店マップについては、先に述べた赤ちゃんへの絵本プレゼント事業開始にあたりウェブサイトに掲載した書店のほか、市内に実店舗があり新刊書を扱っている書店のうちマップへの掲載を希望した書店(2025年5月にアンケートを実施)も追加し、合計41店を掲載している(2025年11月末現在)。マップは、Googleマップを活用し、書店の位置と図書館の位置を掲載している。また、ウェブサイトでは、地域の書店からのメッセージを掲載している。各書店からのメッセージは、それぞれの思いが伝わってきて、読んでいて楽しいものである。
次に2点目の市図書館と地域書店の協働の取り組みについては、各図書館が地域の書店とできることを工夫しながら行っている。これまで行ってきた取り組みの例を紹介すると以下のとおりである。
- 書店と図書館でおすすめ本の紹介・POPの展示(冊子を作成して配布した図書館・書店もあり)
- 書店を開業した人を講師とする講座を図書館で実施
- 区内の図書館と書店でスタンプラリーを実施
- 書店で図書館の出張おはなし会を実施
- 書店見学・図書館見学を実施
これら市内各図書館と地域書店で行った取り組みは、図書館ウェブサイト上で写真入りのカード形式で紹介しているのでご覧いただきたい。
●おわりに
今後の課題としては、まずはマップ掲載書店を増やしていくことが挙げられる。現在、マップへの掲載は、市内新刊書店のおおよそ4割強となっており、今後新規オープンの書店の情報も収集しながら掲載書店を増やしていきたい。またその他、将来的には古書店、本のあるカフェなど、本があり、読書に親しむ人が集う場所も含めて紹介を行っていきたいと考えている。
次に、いかにして今後この図書館と書店の連携の取り組みを持続させていくかということである。お互いにメリットがある取り組みとなっているか、書店と意見交換を行ったり、検証も行いつつ、無理のない形で継続していくことが課題である。
これまで資料を購入する書店以外の地域の書店の人と話す機会がなかったのが、取り組みの機会に様々な話を聞き、地域書店の状況について少しずつ知ることができたのもこの事業を始めた成果の一つといえる。今後も「本のあるとこネットワークなごや」の取り組みのさらなる発展を目指していきたい。
Ref:
“本のあるとこネットワークなごや”. 名古屋市図書館.
https://www.library.city.nagoya.jp/oshirase/syotenrenkei.html
“赤ちゃんへの絵本プレゼント事業”. 名古屋市図書館.
https://www.library.city.nagoya.jp/guide/akachanehonpresent.html
