カレントアウェアネス-E
No.510 2025.10.02
E2828
NPO法人ぐーぐーらいぶの活動:図書館司書が取り組む居場所づくり
特定非営利活動法人ぐーぐーらいぶ代表理事・北川史歩子(きたがわしほこ)
●NPO法人ぐーぐーらいぶとは
ぐーぐーらいぶは、東京都中野区における非常勤制度廃止と図書館業務委託化を契機に、当時図書館業務従事者であり非常勤職員であった図書館司書たちが中心となり2003年に立ち上げたNPO法人である。2004年度より9年間の中野区立中央図書館運営を経て、2013年からは東京都武蔵野市(吉祥寺)を拠点とし(その後同市内で2度転居)、中野区と武蔵野市を中心に独自の活動を展開している。公共図書館からスタートした私たちのベースは「だれもが環境や境遇に左右されず/本を自由に楽しみ/自らで学び/世界を広げ/心豊かに生きるためのサポート」となる活動をすることであり、「図書館司書の職種としての可能性を広げ/地位向上を目指すこと」も切り離せないテーマである。図書館運営から離れた現在の活動の中心は子どもと子育て支援に繋がる活動であるが、特化した取り組みにシフトしたわけではなく、社会全体(ひいては全市民)へのサポートに成り得ることとして、変わらず全ての人への支援を意識した活動を行っている。現在会員数54人、10人ほどのスタッフと不定期に受け入れているボランティアで運営をしている。
●ぐーぐーらいぶの活動
2013年よりスタートした出張おはなし会(おはなしぱんだ)は、中野区と武蔵野市で現在まで途切れることなく行っている。おはなしぱんだを始めてからほどなくして、キャリーに本を詰めて会場に持参し、本の閲覧や貸し出しを行う小さな移動図書館活動(ぐーぐー文庫)も始めた。開始当初は蔵書がなく、公共図書館の団体貸出などを利用しての活動だった。
おはなしぱんだと共に行っていたぐーぐー文庫だが、活動の深まりとともに高まるニーズと増加する蔵書をより楽しめるよう、2016年に武蔵野市西久保の一軒家に移転し、「ぐーぐー子ども文庫」を開いた。現在は約7,000冊の蔵書があり、約7割が絵本、1割が児童書及びYA、2割が保護者向けの育児マンガや離乳食をふくむレシピ本、雑誌等で構成されている。関わる子どもたちの成長と共に、大人用と子ども用など年齢で大きくわけていた本の垣根は下がり、誰もが様々な本を楽しめる居場所となっている。
子どもとその保護者のための小さな図書館として、毎週2回(火曜日・日曜日)開き始めたぐーぐー子ども文庫は、おはなしぱんだとぐーぐー文庫活動の参加者を中心に徐々に利用者も増え、2018年ごろには年間の利用者は延べ2,000人程となった。
ぐーぐー子ども文庫の利用上のルールは次のとおりである。
- 子どもの年齢制限なし
- 飲食自由(持ち込みOK)
- 本を読まなくてもよい
- おしゃべり・お絵描き・ボードゲーム等自由(親子とも仮眠もOK)
日常の中にある居場所の一つとなることを目標に、だれもが長期的に関わり続けられるよう、本を介したコミュニティとしての展開にも取り組んでいる。本を一生の友とすることと読書を強要することは対極にあるものとし、過ごし方は原則自由である。いずれの場づくりにおいても「自分もみんなも心地よく過ごせるよう配慮する」ことのみを掲げ、「本のある居場所」として親しみやすい環境づくりを目指している。コロナ禍を経た2024年、物件の老朽化などの理由から西久保より吉祥寺本町の一軒家に移転し、活動の本格的な再開に向けて整備を進めている。
●今後の展望について
移転先は吉祥寺駅にほど近い立地であり、1階6畳の和室を改修し書店を開業した。開店は不定期ながら、地域の様々な人との交流のきっかけとなっている。2階3部屋の壁を取り払い、ぐーぐー子ども文庫として整備した。現在ぐーぐー子ども文庫は徐々に再開しており、社会的ニーズとして増加する共働き世帯やシングル家庭に寄り添う文庫となるべく、保護者の終業後の夜間や深夜などでの運営も準備中である。年齢に関わらず不安の多い現代において、「本をとおして人を感じられる居場所」として人に寄り添う活動を深めていきたい。
Ref:
ぐーぐーらいぶ.
https://www.goo-goo-libe.jp/