カレントアウェアネス-E
No.357 2018.11.08
E2072
小学校でナイト図書室開催:夏休みに思いきり読書をしよう!
子どもに思いっきり本に親しんでもらおうと,大宮子ども会(大阪市旭区)文化部主催のイベントとして,2018年8月3日夜から4日朝にかけて,大阪市立大宮小学校で「ナイト図書室」を開催した。夏休みに,小学校の図書室で,一晩中,好きなだけ,読書を楽しもう!という企画である。
最近の子どもの読書離れ,携帯ゲーム漬けの日々は,保護者にとって悩みのタネである。同校の校長先生も,もっと読書の習慣をつけてあげたいと仰る。「読書に気軽に親しんでもらうきっかけ作りはできないだろうか。」こんな想いから,この企画を立ち上げた。
参加対象は4,5,6年生のみとした。参加は17人であった。1,2,3年生を参加対象から外したのは,夜の学校の恐怖に耐えてトイレに行けるかが心配だったからである。
読書がメインなので,夕食とお風呂は自宅で済ましてから19時集合とした。あとは眠たくなるまで読書を楽しむだけである。もちろん携帯ゲーム機やスマートフォンは,一切持ち込み禁止とした。
布団も用意した。いくらなんでも,小学生がホントに徹夜で読書はできないだろう。図書室の机と椅子を半分片付け,空いた半分のスペースに布団を敷き詰めた。最初から布団でゴロゴロしながら本を読んで,そのまま寝落ちしてしまってもイイよ!という,本好きには天国のような空間である。また,図書室の電気は一晩中消さないので,別の教室にも布団を敷いておいた。こちらは電気を消し,私語も一切禁止,ゆっくりと寝られる部屋とした。最終的に12人ほどが,こちらの部屋に移動して就寝していた。
実施にあたっては,ひとつ懸念事項があった。ナイト図書室に参加してくれる本好きの子どもは,小学校の図書室の本をほとんど読んでしまっているのではないか?そこで教頭先生の発案により,大阪市立旭図書館に追加で本の貸し出しを依頼した。後日,旭図書館が選定した本を確認すると,怪談の本が多数混じっていた。子どもが小学校にお泊まりして読書をする,というコンセプトを聞き「夜の小学校は,怖いだろ~」と夜の雰囲気作りをたすけるという旭図書館の粋な計らいが感じられて,とても楽しい気分になった。タイトルを見るだけで,その本を選んでくれた方の想いが伝わってくるのも本の良さだと,改めて感じた。
最近の子どもは,自分の考えをうまく他人に表現する力が足らないな,と感じる。そこで,読んだ本を他人にお勧めするPOPや本の内容を書いた背表紙の作成キットを用意したところ,とても好評だった。できた作品は後日小学校で展示された。事前の企画会議の際には,夜が明けたころに,読んだ本の感想を1分程度で皆に発表してもらう案も出たが,発表有りきのイベントにすると子どもがイヤがるのではないか,という意見もあり,今回は見送った。
イベント当日,集合当初の子どもは,夜の学校に来た興奮からか読書ではなく友達と枕投げをしたがるような落ち着かない様子も散見されたが,21時頃には落ち着いて皆が読書をしていた。また,大きな本を紙芝居のようにして下級生に読み聞かせる上級生の姿も見られた。怪談の表紙を見て楽しそう(怖そう?)に盛り上がっている子どももいたが,実際に手に取って読書をする勇気のある子はいなかった。24時頃になると,次第にそのまま寝てしまったり,別室に移動して就寝したりしていた。朝まで読書をしたりPOPや背表紙を作成したりしていたのは2人であった。
6時に起床し,皆で朝食を食べた。朝食にはサンドイッチとジュースを用意した。掃除を終える8時頃に保護者に迎えに来てもらい解散とした。子どもには大変楽しかったと言ってもらい,保護者からは子どもが貴重な体験をさせてもらえたと感謝されたのが良かった。
大人になってから保護者として小学校の図書室を訪れると,読みたい本ばかりである。なぜ子どものときに,これらの本を読まなかったのだろう?実際に,今回のイベントの募集をかけたところ,保護者が泊まって読書をしたい,というご意見を多数頂いた。また,1,2,3年生の参加希望のご意見も多かった。それならば,子どもと保護者が一緒に図書室にお泊まりして読書をする企画はどうだろう。子どもと保護者が,夜の学校の図書室で,ちょっと特別な時間を共有する。それがきっかけで,子どもに読書の習慣がついてくれれば,嬉しいかぎりである。次回の開催に向け,そんなことを考えている。
最後に,快く場所を提供してくださった大宮小学校の校長先生,教頭先生,本の提供をしてくださった旭図書館,協力してくださった大宮子ども会のメンバーに,この場を借りて御礼申し上げる。
大宮子ども会育成連合協議会・久保友紀恵,水本亜季,田中美佳,東礼子,木谷桂子,秋田哲史