E2035 – 地域活性化に挑む:図書館総合展フォーラムin津山<報告>

カレントアウェアネス-E

No.349 2018.06.28

 

 E2035

地域活性化に挑む:図書館総合展フォーラムin津山<報告>

 

 全国の図書館活動の活性化と図書館関係者の情報交換の場を提供することを目的として,図書館総合展「地域フォーラム」(E1968E1940参照)が各地で年3,4回開催されている。2018年の初回は,5月17日に「図書館総合展2018フォーラムin津山」として,「地域活性化に挑む図書館」をテーマに開催された。岡山県内での実施は2014年の岡山市での開催以来の2回目となる。津山市は岡山県県北地域の中心都市であり,人口減少や中心市街地活性化等の課題に取り組んでいる。この4月には市立図書館が設立40周年を迎えた。会場は美作大学に2016年にオープンした美作学園創立100周年記念館である。同建物内に大学図書館もあり,見学ツアーも実施された。主催者発表による本会参加者は170人であった。

 まず,開催地から谷口圭三氏(津山市長),鵜﨑実氏(美作大学学長),主催者から飯川昭弘氏(図書館総合展運営委員長)の挨拶があった。続いて,丹野史教氏(文部科学省生涯学習政策局社会教育課課長補佐)による行政説明「社会教育行政の最新動向」があり,2018年4月に公開された第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」等の解説がなされた。さらに生涯学習・社会教育を取り巻く状況として,学びを通じた地域づくりに関する課題とともに,地方分権に関する地方からの提案への対応から,後述の社会教育施設の所管のあり方が検討されるに至った経緯が述べられた。また,2018年10月の生涯学習政策局の組織再編により設置される総合教育政策局や図書館を所管することとなる地域学習推進課等の体制イメージについても示された。

 続いて,「岐路に立つ図書館~社会教育とまちづくりの間で~」と題し,糸賀雅児氏(慶應義塾大学名誉教授)による基調講演が行われた。フォーラム全体の構成説明に続いて,「まちづくり」と図書館の接点について,これまでの図書館におけるまちづくりへの関わり等が概観された。近年図書館がもつ「集客力」「賑わい創出」に注目が集まっているが,本来は図書館による「ひとづくり」が重要であるとの考えが示された。また、本講演の主題に関わる中央教育審議会生涯学習分科会のワーキンググループで議論されている公立社会教育施設の所管のあり方に関しては,軸足は教育委員会(社会教育)に残しつつ,一定の条件の下で首長部局(まちづくり)を選択できる方向となるのではないかとの見解が示された。その上で図書館が地方自治にとって不可欠の施設であるならば,司書が堂々と首長部局内で事業や予算獲得等で渡り合えばよいのでは?との糸賀氏による会場の関係者の奮起を促す発言がなされた。また,関連する取り組みとして,日本図書館協会(JLA)「認定司書」制度および地方創生レファレンス大賞(CA1918参照)の紹介があった。

 最後に,「地域活性化に挑む図書館」をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。コーディネーターは糸賀氏、パネリストは,額賀順子氏(男木島図書館),大河原信子氏(津山市立図書館),東根さやか氏(岡山県立図書館)であった。

 額賀氏は瀬戸内にある人口約160人の男木島(香川県高松市)に移住し,2016年に島民の交流の場となる私設の男木島図書館(E1798参照)を開館した。SNSによる情報発信やクラウドファンディング(CA1917参照)も駆使しながらの運営と地域のコミュニティベースとしての図書館に対する想いを語られた。

 開催地津山市の大河原氏からは市立図書館・美作大学図書館・津山工業高等専門学校図書館の3館(および津山市内の高校6校)による資料の配送を伴う相互協力が10周年を迎え,設置母体を超えて協同で地域の教育環境の向上に寄与している取り組み(3館連携「津山モデル」)の発表があった。また市内のIT企業との協働により,団体貸出先からさらに個人への貸出を簡便に行うことができるサテライト貸出システム「貸出くんβ」を開発し,シェアオフィスで実証実験を行っている事例が紹介された。

 東根氏は,岡山県立図書館が同県小田郡矢掛町の干柿生産組合の新商品開発や地域の祭りでの地元中高生の企画に関わり,地域活性化につながったことで,2016年に地方創生レファレンス大賞で文部科学大臣賞を受賞した事例を中心に報告するとともに,地域の未来を担う子どもたちへのサービスの重要性を訴えた。

 それぞれの報告は地域の活性化のために官と民いずれの立場からも図書館ならではの貢献ができる可能性を示した。大河原氏が報告中に「いまいちど,ポストの数ほど図書館を」と提起した。より多くの身近な場所で「人が集まる場所に本を届ける/本があるから人が集まる」の好循環を地域の人々とともに目指す取り組みの展開に期待したい。

 フォーラム後の懇親会も地元や県外からの参加者で大変盛況であった。また翌日も,市立図書館見学,市内資料館等見学,オープンデータソン(WikipediaとOpenStreetMapの編集),まちライブラリーにお気に入りの本を持ち寄る植本祭など多くの関連イベントが実施された。「地域フォーラム」の名にふさわしく,開催地域の熱意が存分に感じられる充実した内容であった。

岡山県立倉敷工業高等学校図書館・久戸瀬瑞季

Ref:
https://www.libraryfair.jp/news/6703
https://www.libraryfair.jp/news/6705
https://togetter.com/li/1229157
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/04/1403863.htm
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1405395.htm
https://ogijima-library.or.jp/
https://www.libraryfair.jp/news/5504
E1968
E1940
E1798
CA1918
CA1917