カレントアウェアネス-E
No.329 2017.07.27
E1935
図書館界で働く人向けのスタイリングセミナー<報告>
2017年6月12日,東京都品川区五反田のボードゲームカフェ「ウィンウィン」において,「図書館とその周辺で働く人向け 魅力あふれるプロを目指したい人のスタイリングセミナー」と題したトークイベントを開催した。本稿ではその目的と内容について報告する。
近年,様々な話題で図書館がメディアに取り上げられている。しかし世間一般の図書館に対するイメージは,本を静かに読む場所という従来の域を超えておらず,図書館員の専門性に関する認知度も高くない。理由は様々あるが,その中のひとつが,実際に働く人の外見から醸し出される雰囲気に改善すべき点があるためだと考えた。はっきり言えば「服装や髪型や,メイクを気にしない図書館関係者が相対的に多い」という現実である。そこで今までにない試みとして,ファッション業界の最先端で活動していたプロのファッションコンサルタント,竹岡眞美氏に講師の一人として登壇いただき,自分の外見を魅力的に発信することや,図書館のブランドイメージを皆で考える機会とした。
筆者自身,竹岡氏の指導を受け,50歳手前にして「地味でダサい外見」からシンデレラ並みの(?)変身を遂げた経緯がある。スタイリングが強力なコミュニケーションツールであることを身をもって知り,図書館運営に関するアドバイザリー業務等に携わる筆者としては,そのことを多くの図書館関係者と共有したいという思いがあった。今回は対象を「図書館の周辺で働く人々」まで広げたため,当日の参加者40名の内訳は半数が図書館員,残りが図書館関係のベンダーや出版社の社員,研究者,大学等の職員であった。
最初にイントロダクションとして,図書館サービス計画研究所主宰の仁上幸治氏が「映像の中のトンデモ図書館員たち―ステレオタイプを超える自分ブランディング」と題した講演を行った。このテーマはかなり以前から多くの図書館関係者が取り上げ,論文やエッセイも国内外で多数執筆されている。しかし国内でスタイリングとリンクさせて論じた例は寡聞にして知らない。仁上氏がこれまでに収集した豊富な資料をもとに,映画やドラマの中で描かれる図書館員像,ひっつめ髪に眼鏡,事務服に腕カバーなどの外見から受ける社会的イメージを一通り確認したあと,後半の竹岡氏による講演につなげた。
講演の冒頭から竹岡氏が強調したのは「流行の服を着ること=スタイリング」ではないということである。服だけでなく,ヘアスタイル(と髪の色),メイク,アイウェア,バッグや靴などの小物遣い,これら全てをトータルで考えることが重要で,ここが変わると自分の中に自信と確信が生まれ,言葉遣いや所作が変わる。それにより周囲の態度や他人との関係性が変化し,仕事などにおける社会的な成功につながることが多いという話があった。
様々なビフォーアフター写真を紹介しながら,特に強調していたのは髪の色と服のサイズ,色の組み合わせについてであった。よくあるのが,日本女性は黒髪が一番似合うという思い込みである。竹岡氏によれば,実は,女優のようにシミひとつない美しい肌の持ち主以外,黒髪が似合う女性はいないという。竹岡氏は奥行きと立体感を出すために3色以上で髪を染めることを勧めていた。逆に男性の茶髪は評価できないとのことであった。男性はむしろそのままの自分を生かした方が良く,例えば髪が薄くなってもそれを隠さない方が魅力的に見えるというアドバイスがあった。また「楽だから」という理由で,男性がゆったりしたシャツやズボンを身に着けることを様々な事例を見せながら一刀両断し,サイズの合ったものを選ぶ重要性を力説していた。さらに服装全体の色の「彩度」(色の鮮やかさの尺度)を合わせ,3色以内に抑える,迷ったら白を入れるというアドバイスがあり,いくつかのコーディネート写真が紹介された。
アンケートでは「大変面白かった」「面白かった」との回答が100%で,目先の変わったテーマとして好評だったようである。無論,実際の図書館の現場での制約はあるだろう。エプロンが制服なので,個性を発揮するのは難しい場合もあるし,資料を傷付ける恐れがある時計や指輪,香水や化粧品がご法度の現場もある。しかし,重要なのはむしろ日常の自分のスタイルに対するこだわりであると考える。外見に気を遣うことは知的活動に比べて低俗なものでもなければ,贅沢な趣味でもない。他者との関係性を左右するコミュニケーションツールであり,プロフェッショナルの「たしなみ」である。このことに改めて気づかされるイベントとなった。
株式会社ラピッヅワイド・広瀬容子
Ref:
https://www.facebook.com/events/1873822662906298/
http://mamitakeoka.com/
http://www.libcinema.com/libmvdb/ichi003.htm
http://www.rsch.tuis.ac.jp/~ito/research/lib_articles/itoh/libcinema1.html
https://drive.google.com/file/d/0BzjiFUntj382TjFNdEdkYm10SVU/edit