カレントアウェアネス-E
No.262 2014.07.10
E1578
神戸市立図書館が「神戸賀川サッカー文庫」を開設
神戸市では,賀川浩氏(神戸市出身,元サンケイスポーツ編集局長)から,所蔵するサッカー関連図書及び雑誌など(約5,000点)を受託して,2014年4月20日に中央図書館内の資料室を利用して「神戸賀川サッカー文庫」を開設した。
1. 文庫開設に至る経緯
2011年10月に,神戸市は,賀川氏から神戸市サッカー協会を通して,所蔵するサッカー関連資料の展示場所提供の要請を受け,いくつかの施設の使用を検討したが,様々な課題があることから適切な場所が決まらなかった。その後2013年度になり,市のスポーツ体育課からの打診を受けた神戸市立図書館は,内部で検討した結果,「特別コレクション」のひとつとして受入れる方針を固めた。受入れ時期については,中央図書館1号館は耐震化工事が予定されていたため,工事終了後の2014年春とした。
2. サッカー文庫資料と運営状況について
受託したサッカー関連資料は,賀川氏がワールドカップの取材や関連記事を執筆するために集められた図書を中心とし,『サッカーマガジン』,『サッカーダイジェスト』,『イレブン』の雑誌バックナンバーが揃っているなど,サッカーファンには魅力的なコレクションである。
賀川氏の「図書・資料に囲まれて仲間とサッカーを語り合うルームを持ちたい」という望みを叶えるため,室内では自由に会話をしていただけるような配慮を行った。開室日は毎週火・木・土となっており,それに合わせて賀川氏も来館される。開室日にはサッカー資料の閲覧より賀川氏との“サッカー談義”を楽しみに来館される方もおられる。
資料は秩父宮記念スポーツ図書館の分類を参考に整理されているが,未整理の図書については賀川氏の関係者が開室日に来館し,ボランティアとして分類・整理作業に協力してくださっている。また,賀川氏自身のWebサイトである「賀川サッカーライブラリー」では,整理済み資料の検索が可能となっている。
3. 講演会開催とさまざまな反響
今年はワールドカップ開催年にあたることから,サッカーへの関心が高まっていた。賀川氏を講演者として,4月20日に「開設記念講演会」,5月31日には「ワールドカップ講演会」を開催した。「ワールドカップ講演会」は,賀川氏が10回目のワールドカップ取材へ向かう直前に開催したもので,ご自身の9回の取材を通して感じたワールドカップの魅力や大会運営の裏側等をお話しいただいたものである。いずれも多くの市民が参加し,新聞やテレビニュースでも報道された。 開設セレモニーには関西,大阪府,兵庫県,神戸市,芦屋市の各サッカー協会と,神戸FC,(株)ウィングスタジアムの代表者が出席され,日本,関西,大阪府の各サッカー協会とヴィッセル神戸から花が贈られるなど,改めて賀川氏の人望とサッカー界での功績が感じられるものとなった。
その後もワールドカップの開催に関連して,民放ラジオ番組など多くのメディアの取材を受けている。またワールドカップ開催中は中央図書館1階で,賀川氏がこれまでのワールドカップ取材で手にしたプレスパス(記者証),記者用チケットや大会記念品をガラスケースで展示しており,身を乗出し覗き込む市民も多い。
4. サッカー文庫の今後
開設後約2か月半を経過し,「神戸賀川サッカー文庫」は賀川氏の望んだサッカー関連の図書や雑誌に囲まれた人と人がつながる場となりつつある。中央図書館内にありながら,ドアを開けて部屋に入ると別世界なのである。今後はこの雰囲気を大事にしながらも,図書や雑誌の配架場所の見直しや必要に応じて書架の増設を行い,サッカーを調査研究する目的の来館者にも役立つ文庫としていきたい。
神戸市立図書館では前回のワールドカップ開催年(2010年)から,地元Jリーグチームと連携する有志の図書館からなる,図書館海援隊サッカー部が行う「図書館からスタジアムへ,スタジアムから図書館へ!」に参加し,ヴィッセル神戸の協力を得て取組みを行ってきた。このたびの賀川氏が所蔵するサッカー関連資料の受託により,日本サッカー発祥地のひとつであり,市内にプロフットボールチームが3つもある“サッカーの街神戸”にある図書館として,賀川氏やサッカー文庫に関わる方々の協力を得て情報発信ができればと考える。
神戸市立中央図書館・松永憲明
Ref:
http://library.footballjapan.jp
http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2014/04/20140407840701.html
http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/library/top/info_20140513.html