E1305 – デジタル教科書教材協議会,「デジタル教科書法案」等を公表

カレントアウェアネス-E

No.217 2012.06.28

 

 E1305

デジタル教科書教材協議会,「デジタル教科書法案」等を公表

 

 2012年6月5日,デジタル教科書教材協議会(DiTT)(CA1748参照)が,シンポジウム「これからのデジタル教科書の話をしよう~成果発表と2012年提言~」を開催した。DiTTは,このシンポジウムに併せて,2012年4月5日発表の「DiTT政策提言2012」を踏まえて結成した外部有識者による法案検討チームが策定した「デジタル教科書法案」,「デジタル教科書普及のための財政措置」「教育の情報化総合計画」「教育の情報化ナショナルセンター(仮称)」についての提言を公表した。

 DiTTは,全ての小中学生がデジタル教科書・教材を持つ環境を実現することを目的に設立されたコンソーシアムである。2010年7月27日に発足し,2012年6月27日現在,幹事19社と一般94社,計113社が参画している。

 「教科用図書としてのデジタル教科書の普及の促進を図り,もって二十一世紀にふさわしい教育の実現に資すること」を目的とする「デジタル教科書法案」は,「デジタル教科書」を定義づけた上で,学校教育法や教科書の発行に関する臨時措置法,著作権法における「教科用図書」ないし「図書」の概念にデジタル教科書を含める規定,国や自治体等の責務,デジタル教科書の標準規格等について定めている。この改正により「デジタル教科書」を,法律上,現行の紙の教科書と同等のものとして,検定及び無償配布の対象とさせるとともに,現行と同等の著作権法上の特例を受けることができるようにしている。アクセシビリティに関しては,国は障害のある児童及び生徒が読み上げ,拡大等の機能に対応するデジタル教科書を使用することができるために必要な措置を講じるものとすることと提言している。また,国はデジタル教科書に関する調査研究等を推進するものとするとも提言している。

 「デジタル教科書普及のための財政措置」では,教科書予算は紙の教科書とデジタル教科書のものを併用とし,デジタル教科書普及のための基盤整備は教育の情報化交付金等2,000億円を毎年充当して行うこと,デジタル化教科書用端末を2015年度に全員配布するために2,100億円を充当し,以後は小1,小4,中1に新規整備を行うため毎年700億円を充当すること等を提言している。

 「教育の情報化総合計画」は,デジタル教科書や教材の普及と情報端末等の整備充実,学校教育へのサポート体制の充実,情報活用能力の向上,そして,デジタル教科書早期実現のための検討について2012-2015年度までの想定スケジュールを示している。このうち,デジタル教科書早期実現のための提言の中で登場する「教育の情報化ナショナルセンター(仮称)」については,別に公表された資料で詳述されている。それによると,2015年度当初からの運用が目指されている同センターは,「教育の情報化総合計画」を組織的かつ確実に推進し,運営する組織として位置づけられている。そして,政策立案・ICTサービス運営・自治体支援の3つを担当し,文部科学省や総務省等の関係省庁に対して政策提言と予算要求を行うものとされている。

 なお,シンポジウムと同日付でDiTTは,2011年度時点における国内外の教育の情報化の現状と課題を調査した「教育の情報化 現状と課題レポート」と,2011年度にDiTTの4つのワーキンググループが実施した13の実証実験の内容とその結果をまとめた「2011年度DiTT実証研究レポート」を公表している。

(関西館図書館協力課・菊池信彦)

Ref:
http://ditt.jp/news/?id=1899
http://ditt.jp/office/DiTThouan_ver2.pdf
http://ditt.jp/office/DiTThouan_gaiyo_ver2.pdf
http://ditt.jp/office/finances.pdf
http://ditt.jp/office/plan.pdf
http://ditt.jp/office/nationalcenter.pdf
http://ditt.jp/office/DiTTreport2012_2.pdf
http://ditt.jp/office/DiTTproject2011.pdf
CA1748