カレントアウェアネス-E
No.202 2011.10.13
E1226
イングランド芸術評議会による博物館・図書館支援方針案
2011年9月13日付で,イングランド芸術評議会(Arts Council England:ACE)が,英国の博物館と図書館に対する今後の支援方針案をまとめた文書“Culture, Knowledge and Understanding: Great Museums and Libraries for Everyone”を公開した。これまで英国では図書館等への支援事業は,主に英国博物館・図書館・文書館国家評議会(MLA)が担当していたが,同国における経済危機を契機とした政府の業務再編の中でMLAの解散が決まった(E1128参照)。このことから,2011年10月1日にMLAの事業のうち博物館と図書館に対する支援事業をACEが引き継ぐことになったため,今回の方針案の公表に至ったものである。なお,同国の文書館に対する支援については英国国立公文書館(TNA)が担当する。
この度公開された文書は,2010年9月4日に発表された,今後10年間のACEの芸術振興活動の枠組みを示した“Achieving great art for everyone”の一部をなすものとして作成されたものである。ACEは2012年3月まで,文書の内容について博物館や図書館関係団体等と協議を続けるとともに,広く意見を求めるとしている。なおACEは同文書と併せて公開した,博物館と図書館の現状を把握するために行なった研究文献等のレビュー“A review of research and literature on museums and libraries”についても意見を募集している。
文書ではACEの今後10年間の長期目標として次の5つが掲げられている。
- 博物館と図書館のコレクションの充実や積極的な対外活動,研究活動等の支援を行う。
- 利用者の生活を豊かにし市民に刺激を与える場としての博物館と図書館であるために,利用者に地域コミュニティへの自覚を促したり,観光等によって地域経済に貢献したりすること等を通じて,博物館と図書館の役割を地域の中で確立したり,それらと地域との間での協働等への支援を行う。
- 厳しい財政状況の中で,博物館と図書館の成長にとって財政面の支援は重要なものであるため,ACEとその他助成団体との関係強化,経営面で他館の参考になりそうな博物館や図書館への支援,博物館と図書館への寄付促進等の活動を行う。
- 博物館と図書館の職員は高度に専門化された多様な人材であるため,ACEはそれらの多様性が保たれるようにするとともに,職員の技能向上と各館の間での協力関係の奨励等を行う。
- 博物館と図書館は子どもや若者の成長に貢献するものであるため,芸術や文化の提供についての議論を行うとともに,ACEの委員会の場で教育と文化施設との間の新たな関係のあり方についての検討等を行う。
また文書では,特に図書館関係の2011-2015年の短期計画として,これまでMLAが行ってきた,厳しい財政状況での図書館の在り方を検討する「将来の図書館プログラム」を,地方自治体グループ(Local Government Group)とともに2011年秋から2013年3月末までの期間に2段階で実施すること,そして芸術活動,博物館,図書館への助成や支援プログラムをそれぞれに対し別々に行うのではなく,可能な場合は一本化させるように検討すること等を挙げている。
Ref:
http://www.artscouncil.org.uk/news/arts-council-england-sets-out-plans-working-museum/
http://www.artscouncil.org.uk/publication_archive/developing-great-museums-and-libraries/
http://www.artscouncil.org.uk/media/uploads/pdf/culture_knowledge_and_understanding.pdf
http://www.artscouncil.org.uk/news/museums-and-libraries-formally-transfer-arts-counc/
http://www.artscouncil.org.uk/publication_archive/museums-and-libraries-research-review/
http://www.artscouncil.org.uk/media/uploads/pdf/a_review_of_research.pdf