E1209 – 北米260大学のOPACの「次世代度」をチェック<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.199 2011.08.25

 

 E1209

北米260大学のOPACの「次世代度」をチェック<文献紹介>

 

Yang, Sharon Q.; Hofmann, Melissa A. Next generation or current generation?: A study of the OPACs of 260 academic libraries in the USA and Canada. Library Hi Tech. 2011, 29(2), p.266-300

 Library Hi Tech誌の29巻2号(2011)に,米国ニュージャージー州のライダー大学の図書館員であるヤン(Yang)氏とホフマン(Hoffmann)氏による論文“Next Generation or current generation?: A study of the OPACs of 260 academic libraries in the USA and Canada”が掲載された。これは,米国・カナダの大学図書館のOPAC(ディスカバリインターフェース含む)が,「次世代OPAC」(CA1727参照)の機能として著者らが選んだ12項目をどれくらい実装しているか調査したものである。

 調査は2009年9月から2010年7月にかけて行われた。著者らはまず“Peterson’s Guide to Four-Year Colleges 2009”に掲載された2,560の大学から260校をランダムに抽出した。その中にはウェブサイトやOPACを公開していない大学(40校)や,複数のOPACを持っている大学が含まれており,最終的に233件のOPACが分析対象となった。

 著者らが次世代OPACの機能として選んだのは次の12項目である。

 「全図書館資料をワンストップで統合的に検索できる」「最新のウェブインターフェース」「図書の表紙画像等のコンテンツを含んでいる」「ファセット検索」「詳細検索へのリンク付きのシンプルな検索ボックスが全ページに存在する」「検索結果の関連度順ソート」「もしかして(スペルチェック機能)」「レコメンデーション」「ユーザがタグやコメント等を付与できる」「新着資料等の情報をRSSで出力できる」「ソーシャルネットワーキングサイトとの連携」「資料の詳細情報画面にパーマリンクが用意されている」

 主な調査結果は次の通りである(以下の比率は,OPACの総数233にOPACを公開していない大学の数を加えた273を母数として計算されている)。

  • 16%のOPACはいずれの項目も満たしていなかった。
  • 1~5個の項目を満たすOPACは61%だった。
  • 6個以上の項目を満たすOPACは多くがディスカバリインターフェースによるもので,特に,7~10個の項目を満たす3%(8件)のOPACはOCLCのWorldCat LocalかSerials Solutions社のSummonだった。
  • 11個以上の項目を満たすOPACは存在しなかった。全く導入されていなかった機能は「貸出統計に基づく関連度順ソート」と「利用者の行動履歴に基づくレコメンデーション」だった。

 著者らは,北米の大学図書館のOPACは次世代OPACの理想に近づいているが,7個以上の項目を満たすOPACが3%しか存在しなかったことを考えるとまだ満足できる状態ではないと結論づけている。

 とりわけ,統合検索は次世代OPACに欠かすことができない最重要機能であるものの,ほとんど(73%)のOPACが実装しておらず,特に論文単位の検索まで可能なのは9件(3%)だけだったと指摘している。その実現には,技術的な問題の解決に加えて,各データベースに接続するための検索用コネクタの開発や,論文単位の検索に必要なインデックスの提供のためにベンダと交渉しなければならないことがあるという問題も存在するという。そのため,統合検索は上記12項目のうちで最も実装が困難な機能だと分析している。しかしながら,真の意味でワンストップな検索サービスを提供できるようになるまでは「次世代」と言うことはできないと論文は締めくくられている。

Ref:
http://dx.doi.org/10.1108/07378831111138170
CA1727