E1188 – 図書館情報学修士号は価値あるものですか? 2つの調査から

カレントアウェアネス-E

No.196 2011.07.07

 

 E1188

図書館情報学修士号は価値あるものですか? 2つの調査から

 

 2011年6月14日に,米国のコロラド州立図書館等による調査グループLibrary Research Service(LRS)が,図書館情報学修士号(MLIS)の価値をテーマに実施したウェブサイトでの簡易調査(60-Second Survey)の結果を発表した。LRSは2008年にも同様の調査を行っており,今回で2度目である。

 LRSは,2008年と2011年の両方とも,主にライブラリアンを対象に調査を実施し,(1) 「MLISは時間とお金をかけて取得する価値がある(あった)か?」(2) 「現在,MLISを取ることを勧めるか?」という2つの質問を行っている((2) についてはMLIS非取得者にも質問)。2回の調査ともに,回答は米国に限らず世界各国から寄せられており,2008年では約2,000名が,2011年では約2,500名が回答した。

 2008年の調査結果をまとめると以下のとおりであった。

  • 質問(1) では,回答者全体の89%が「価値がある」と答えている。
  • 質問(1) で,16年以上前にMLISを取得した回答者は95%が「価値がある」と回答している一方で,5年以内に取った人ではその率は81%に下がる。
  • 質問(2) では,MLIS取得者全体の86%が「MLIS取得を勧める」としているものの,MLIS非取得者のうち「MLIS取得を勧める」と回答したのは58%であった。

 これに対し,2011年の調査結果は次のとおりである。

  • 質問(1) に対して,「価値があると強く思う」もしくは「価値があると思う」と回答したのは合わせて76%であり,「価値があるとは思わない」「価値があるとは全く思わない」との回答は11%であった。
  • 質問(1) で,16年以上前にMLISを取得した回答者は92%が「価値があると強く思う」「価値があると思う」と回答していたのに対して,1-5年前に取得した回答者のうち同様の回答をしたのは合わせて65%であった。なお,1年以内に取得した人は,「価値があると強く思う」「価値があると思う」と回答したのは合わせて68%であった。
  • 質問(2) では,「MLIS取得を強く勧める」「勧める」と回答した人の割合は全体で63%であり,「勧めない」「止めるように説得する」という回答は合わせて24%である。
  • 質問(2) で,MLISを16年以上前に取得した人は,「強く勧める」「勧める」の回答が合わせて75%となるのに対して,1-5年前の取得者で同じ回答をした人の割合は49%となる。1年以内に取得した人で,「強く勧める」「勧める」と回答したのは合わせて60%である。

 両調査における回答者の属性等が不明であるうえに,LRS自身,この調査はMLISの問題に関心のある人々が自ら参加したものであるため,調査結果はライブラリアン全体の意見を代表するものではないとしている。したがって安易な比較はできないが,上記の2つの調査結果からは,MLISに価値を見出すライブラリアンは相対的に多数派であるものの,その割合は3年間の間に減少していること,MLISを取得したのが最近であるほど,MLISに価値を見出すライブラリアンの割合は少ないことを指摘できるだろう。

Ref:
http://www.lrs.org/news/2011/06/14/results-from-the-60-second-survey-what-is-the-value-of-an-mlis-to-you/
http://www.lrs.org/documents/fastfacts/269_Is_It_Worth_It.pdf
http://www.lrs.org/documents/fastfacts/270_In_Your_Own_Words.pdf