カレントアウェアネス-E
No.189 2011.03.03
E1150
電子書籍フォーマットEPUB3のパブリックドラフトが公開
電子書籍の規格であるEPUBの新しいバージョンとなるEPUB3のパブリックドラフトが2011年2月15日に公開された。
EPUBはHTMLやCSSのようなWeb標準技術などを用いたオープンスタンダードの電子書籍フォーマットで,電子出版業界の国際的組織であるInternational Digital Publishing Forum(IDPF)が仕様の策定・管理を行っている。GoogleやSony,AppleなどがEPUBを採用している。今回,パブリックドラフトとして公開されたEPUB3は現行のバージョンであるEPUB2.0.1からのメジャーアップデートとなる。
今回のパブリックドラフトによると,EPUB3へのアップデートによる変更点は主に次のようになるようである。
- HTML5ベースに移行
EPUBのベースコンテンツフォーマットが以下のように変更される。
EPUB2.0.1 : XHTML 1.1 or XML(DTBook) + CSS2
EPUB3 : HTML5(XHTML5)+CSS2.1 + CSS3の一部 - 国際化対応
縦書き表示ができないなど,EPUB2.0.1では不十分だった欧米言語以外のコンテンツに対するサポートが強化される。日本語に関係するところでは,日本語組版への対応が強化され,縦書き,縦中横,ルビ,圏点などの表示が可能となる。 - リッチメディアのサポート
動画ファイルと音声ファイルがサポートされる。HTML5のvideo/audioタグを使用することにより,電子書籍の本文の中でビデオファイルと音声ファイルを再生することが可能となる。 - テキストと同期させた音声の再生
テキストとマルチメディアを同期させるためのマークアップ言語であるSMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)3.0のサブセットがサポートされる。テキストと同期させて音声ファイルを再生させることが可能になる。 - インタラクティブなコンテンツのサポート
HTML5とベクター形式の画像フォーマットであるSVG(Scalable Vector Graphics)の仕様で定義されたスクリプティング(JavaScript)がサポートされる。 - リーダーの読み上げ機能のサポート強化
発音辞書の搭載,読み上げ時の声の高さや読み上げスピードなどの指定などがEPUBで可能となる。
上記で紹介したEPUB3における縦書き,ルビ,圏点など日本語組版対応の強化は策定作業中のCSS3の一部(CSS Writing Modes Module,CSS Text Levelなど)を採用することで実現している。CSS3の仕様の多くがまだドラフトの段階ではあるが,オープンソースHTMLレタリングエンジンであるWebkitにCSS3の実装が進んでおり,AppleのiBooksなどWebkit採用のEPUBリーダーでの日本語組版対応も進む見込みとされている。
EPUB3を国際規格化する検討も仕様策定と並行して進められている。国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の第1合同技術委員会において文書の記述と処理の言語に関する標準化を担当する副委員会(ISO/IEC JTC1 SC34:ISO/IEC Joint Technical Committee 1 for Information Technology Subcommittee 34)の中にアドホックグループが設立されて,EPUBをどのように国際規格化するべきかについての検討が現在行われている。
IDPFは,今回公開されたパブリックドラフトに対するパブリックコメントを集め,2011年半ばにもEPUB3の最終仕様を公開する予定である。
(関西館電子図書館課・安藤一博)
Ref:
http://idpf.org/news/epub-3-specification-public-draft-released
http://idpf.org/epub/30
http://code.google.com/p/epub-revision/
http://groups.google.com/group/epub-21-working-group
http://www.est.co.jp/press/110119.htm
http://www.xmlmaster.org/murata/xmlblog/xb100911.html
http://www.itscj.ipsj.or.jp/sc34/open/1501.htm