E1135 – Wikileaksに対する図書館界の反応

カレントアウェアネス-E

No.186 2011.01.20

 

 E1135

Wikileaksに対する図書館界の反応

 

 2010年12月3日,米国議会図書館(LC)は,米国政府の機密情報等を公開しているウェブサイト“Wikileaks”への館内からの利用者・職員によるアクセスを制限する措置を講じた。LCのブログには,その理由について,「法律により連邦機関は機密情報を保護する義務があり,不認可の暴露行為は機密状態を変化させるものではない」と記されている。この件に対する図書館界の反応を紹介する。

 公共図書館の課題等を研究する米国の図書館員の団体“Progressive Librarians Guild(PLG)”は12月4日に声明を出し,公表された情報へのアクセスを制限することは検閲に当たり,また読むことを咎めることは知的自由を縮小させる,として米国図書館協会(ALA)にLCを非難するよう促している。12月6日付けで米国科学者連盟(Federation of American Scientists:FAS)が運営するSecrecy Newsブログに掲載された記事では,LCの措置が同館の議会調査局(Congressional Research Service:CRS)からのWikileaksへのアクセスについても制限していることが問題視されており,CRSには異なるポリシーを適用する余地を設けるべきというCRSの元関係者の意見等が記されている。

 12月8日付けのLibrary Journal誌の記事や12月10日付けのAmerican Libraries誌の記事には,上記のPLGやFASの見解のほか,LCの対応を批判するものを中心に図書館関係者による意見が紹介されている。その中の一つである,カリフォルニア州のサンノゼ公共図書館の図書館員のブログには,PLGの声明に賛同すると共に,情報へのアクセスを制限することは,それがどんな情報であっても検閲に当たり,LCの行為は非良心的である,と記されている。

 12月下旬に,ALAの知的自由部(Office for Intellectual Freedom)とワシントンオフィス(Washington Office)は,新しいウェブサイト“ALA Emerging Issues”を開設した。図書館や図書館員,ALAに関する新たに出現した問題についての情報を素早く提供するためのものである。最初のテーマとして“Wikileaks”が取り上げられており,Wikileaksの概要や図書館界の反応等の情報のほか,新聞記事等を含む各種情報源へのリンクが提供されている。コンテンツの一つである,ALAを含む30の機関・団体が署名した政府職員宛の公開書簡では,過去の判例から,憲法修正第1条により出版者には真実の行政情報を公表する権利が,インターネットユーザーには情報を得る権利があることを示し,今後のWikileaksに関する議論ではそれらの権利を考慮するよう訴えている。また,ノルウェー図書館協会等の声明も掲載されており,図書館は合法的なものであれば情報の提供をその内容によって制限すべきでない,との見解と共に,Wikileaksの活動やコンテンツが図書館の役割について考え直す契機になっているとも記されている。

Ref:
http://blogs.loc.gov/loc/2010/12/why-the-library-of-congress-is-blocking-wikileaks/
http://libr.org/plg/lcwikileaks.php
http://www.fas.org/blog/secrecy/2010/12/crs_block.html
http://www.libraryjournal.com/lj/home/888367-264/library_of_congress_blocks_wikileaks.html.csp
http://americanlibrariesmagazine.org/news/12102010/federal-ban-wikileaks-website-embroils-librarians
http://librarianinblack.net/librarianinblack/2010/12/censorship-is-censorship-especially-when-its-the-library-of-congress.html
http://www.emergingissues.ala.org/wikileaks/