E1031 – 電子図書館のユーザビリティに関する調査(英国)

カレントアウェアネス-E

No.168 2010.03.24

 

 E1031

電子図書館のユーザビリティに関する調査(英国)

 

 英国のJISC(情報システム合同委員会)が支援するプロジェクトとして実施された,電子図書館のユーザビリティ(使いやすさ)に関する調査の報告書が2010年2月18日に公表された。これまでの電子図書館開発ではユーザビリティが必ずしも重視されていないとの認識に立ち,規模の異なる5つの電子図書館(OPAC等を含む)を対象に調査が行われた。対象となったのは,世界規模のワールド・デジタル・ライブラリ(E912参照),欧州規模のEuropeana(CA1632参照),国規模の英国図書館,地方規模のスコットランド文化資源アクセスネットワーク(SCRAN),地域規模のエジンバラ大学 AquaBrowserの5つである。

 報告書ではまず,近年の電子図書館に見られる特徴的なインターフェイスを紹介している。ユーザの操作に応じて即座に表示を変化させる「ダイナミッククエリ」,並んだ画像を回転するように移動して表示する「カルーセル」,キーワードを出現頻度に応じた大きさ・位置で表示する「タグクラウド」等について,その概要と各電子図書館での使用状況が示されている。

 続いて,各電子図書館における基本的なユーザビリティについて,情報探索(検索とブラウジング)や検索結果のナビゲーション等の項目に分けて評価が示されている。評価基準には,ウェブサイトを経験則に基づき評価するヒューリスティック評価の二つの基準が用いられている。一つは,ユーザビリティ研究者のニールセン(Jacob Nielsen)氏によるもので,もう一つは,国際標準化機構(ISO)によるものである。それらに含まれる,「ユーザが普段使う言葉で説明する」「ユーザの行動に自由度がある」「画面や用語に一貫性がある」「覚えなくても見てわかる」等の様々な指標を基に,ユーザ(特に初心者)が遭遇するであろう課題が指摘されている。

 基本的な問題(操作ボタンや検索ボックスが見づらい,対象資料群ごとに画面デザインが異なる,アイコンや機能の説明がない等)の指摘に加え,大量の検索結果を複数ページで表示するのは不便なのでファセット検索等を組み合わせた方がよいこと,「ヘルプ」は「より上手に使うために」と表示した方が多くのユーザが使用すること,エラー時の表示は対処法を示す必要があること,等の改善法も指摘されている。

 報告書は,ウェブサイトの比較例としてTwitterやFacebook等のソーシャルメディアのサイトに度々言及している。結論部分でも,ウェブ2.0が電子図書館に大きな影響を与えていることを指摘し,ソーシャルメディアの普及により,ユーザ同士での情報共有等のソーシャルな機能が求められるようになっているとしている。

 巻末に付録として付けられているヒューリスティック評価の二つの基準を読むだけでも,ユーザビリティに配慮したシステム作りの一助となるものと思われる。

Ref:
http://library2.nesc.ed.ac.uk/fedora/get/lib:10182/DS1
http://www.wdl.org/en/
http://www.europeana.eu
http://www.bl.uk
http://www.Scran.ac.uk/
http://aquabrowser.lib.ed.ac.uk/
CA1632
E912