カレントアウェアネス-E
No.164 2010.01.20
E1007
図書館司書が選んだ「本の福袋」の貸出
2010年1月に,兵庫県の宝塚市立西図書館で,子ども向けの「本の福袋」の貸出が行われた。0歳から小学校6年生までの10段階の対象年齢ごとに,児童書担当者によるお勧めの本を数冊ずつセットにして包み,貸出手続きが終わるまで中身が見えないようにして貸出すというこの企画について,同図書館の担当者に話を聞いた。
●実施の経緯は?
年末に福袋に関するテレビ報道を見て思いつき提案したところ,一般書は個人の好みが多岐にわたり難しいかもしれないが,児童書については担当者の知識を役立てる機会にもなり,面白いのではないかということになりました。数量は短期間で準備作業のできる100セット限定とし,児童書担当者2人(絵本担当と読み物担当)でそれぞれの分野を担当して,年末3日程度で選書を行いました。1月5日の年明けの開館と同時に展示を開始し,3日目に,追加分も含めた140セットの貸出が完了しました。なお,貸出終了後に知ったのですが,千葉県の浦安市立図書館で既に実施されているようなので,当館が最初という訳ではないようです。
●工夫した点は?
袋代のコストを抑えるため,保存年限の過ぎた英字新聞で包んで福袋としました。そして,袋の表に,「どうぶつだいすき」「そんなアホな」「哲学もたまにはいいんじゃない?」など,内容のヒントとなる一言と冊数を書いたメモを添えました。例えば,5~6歳向けの「そういわれると・・・」というヒントの袋には,谷川俊太郎『あけるな』などが入っている,といった具合です。ヒントが見えるように展示用ブックスタンドで展示したり,台に平置きにして年齢ごとに分かれるよう配置しました。また,貸出手続きについては,袋を開けずに手続きをするため,袋の中の資料のバーコードと同じものを打ち出して袋の裏側に貼り,貸出時に回収するようにしました。
●利用者の反応は?
子どもは大人に促されつつ気になる袋を選ぶ感じでしたが,一人で4つも選ぶ子どももいました。お孫さんに祖父母の方が選ぶ姿も目立ちました。「福袋を喜んでました」と声をかけてくださる保護者の方や,学校で福袋のことを友達から聞いて借りにきた小学生もいました。初めての展示形態でしたので,貸出・返却方法の問い合わせも多かったです。元のように新聞で包みなおしての返却もありましたし,福袋はそのままもらえる本の詰め合わせと思った方もいました。当館では初めての企画で利用者にも未知の世界だったようで,返却方法を包みにも書いておけばよかったと思います。
●実施してみてのご感想は?
大人の方は「面白い」と思ってくださったようですが,実際に読んだ子どもの感想が聞いてみたいです。同じ本でも,自分で棚から選ぶのと,包みを開けて初めて出会うのとでは,その本を読む姿勢も違うのではないかと思います。自分では探さない本と出会えたのか,自分で選んだ方がよいか,などの点が知りたいです。課題としては,対象年齢の設定の仕方や,毎年違う本を選ぶことに難しさがあると感じました。しかし,子どもの「(福袋は)どうやって返すんですか?」というようなかわいい言葉を聞くと,利用者に楽しんでもらえる新しい企画を考えようというやる気が生まれます。
(協力:宝塚市立西図書館)
Ref:
http://mainichi.jp/select/today/news/20100107k0000m040022000c.html
http://www.library.takarazuka.hyogo.jp/