欧州委員会(EC)、著作権保護対象作品の障害者にとっての可用性に関する報告書を公開

2022年4月12日、欧州委員会(EC)が、著作権保護対象作品の障害者にとっての可用性に関する報告書“Report on the availability of certain copyright protected works for persons with disabilities within the internal market”を公開したと発表しました。

ECは、マラケシュ条約に対応するための指令(2017/1564)の対象外となる、画像、映像等の視聴覚コンテンツ、ビデオゲーム、彫刻等の作品をアクセシブルな形式で利用できるかに関して評価を行い、必要に応じて提案を行うよう、同指令の第9条で定められています。今回の報告書は、同条項を踏まえたものであり、障害当事者や関係団体、権利者、コンテンツ制作者といった利害関係者34人や、EU加盟国から集めた情報を基にしています。

報告書の中では、アクセシブルな形式の可用性に関する現状や流通状況、促進のための取組、ボーン・アクセシブルな作品の制作とアクセシブルな形式での複製物の作成、考えられるニーズがまとめられています。

結論の箇所では、同指令の対象外の作品のアクセシブルな形式での可用性は多様であり、特に視聴覚資料について、依然としてギャップが存在すると障害者関連団体等から意見が寄せられたとあります。その他、アクセシブルな形式の提供の障壁となり得るものとして、コスト、公的資金や情報の不足、相互運用性等が挙げられたこと、障害者のニーズに対応する著作権の例外規定や、同指令の対象外の作品もアクセシブルな形式での交換を可能とすることの重要性が指摘されたこと等が述べられています。

Report on the availability of copyright protected works for persons with disabilities(EC, 2022/4/12)
https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/library/report-availability-copyright-protected-works-persons-disabilities

参考:
欧州連合、マラケシュ条約に対応するために採択された規則・指令を公布
Posted 2017年9月25日
https://current.ndl.go.jp/node/34727

CA1831 – マラケシュ条約―視覚障害者等への情報アクセスの保障に向けたWIPOの取り組み / 野村美佐子
カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1831