主要な学術雑誌171誌の査読・プレプリントに関する方針の明確性等の調査(文献紹介)

オープンアクセス(OA)の査読誌PLOS ONEに、2020年10月21日付けで、各研究分野の主要な学術雑誌について、査読・プレプリントに関する方針の明確性等の調査結果を報告した論文が掲載されています。

著者らは、研究者が適切な学術雑誌を選択して研究成果を出版するためには、各雑誌の出版に関する方針が明確でわかりやすく示されているかが重要であるという立場から、主要な学術雑誌の査読とプレプリントに関する方針の調査を実施しました。Googleの提供する学術雑誌の評価指標“Google Scholar Metrics”において、総合順位で上位100位までの雑誌と各分野別の順位で上位20位までの雑誌から、合計171誌を調査対象としています。論文では、調査の結果として主に次のようなことを報告しています。

・31.6%の学術雑誌は、査読の種類(ダブルブラインド、シングルブラインド等)に関する情報を提供していなかった
・39.2%の学術雑誌は、原稿をプレプリントとして投稿してよいかどうかについて情報を提供していなかった
・58.5%の学術雑誌は、査読者の情報を著者に開示するかどうかについて情報を提供していなかった
・約75%の学術雑誌は、共同査読・プレプリントからの引用・査読者の情報開示について明確な方針を定めていない
・オープン査読の実施について明確な情報を提供している学術雑誌は20%未満である

著者らは調査の結果から、査読やプレプリントのような学術出版における基本的な情報すら、大半の学術雑誌の方針は不明確であり、オープンリサーチの普及やキャリア初期の研究者の研究実践等の障害となっている可能性がある、と結論づけています。

Klebel, T. et al. Peer review and preprint policies are unclear at most major journals. PloS one. 2020, 15(10), e0239518.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0239518

参考:
CA1829 – 査読をめぐる新たな問題 / 佐藤 翔
カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1829

CA1961 – 動向レビュー:岐路に立つ査読と、その変化に踏み込むPublons / 松野 渉
カレントアウェアネス No.341 2019年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1961

学術雑誌のオープン・ピア・レビュー、共同査読、プレプリント公開に関する方針を確認できるデータベース”Transpose”公開
Posted 2019年6月25日
https://current.ndl.go.jp/node/38446

欧州分子生物学機構とASAPbio、投稿前原稿の査読プラットフォームサービス“Review Commons”を2019年12月に立ち上げ
Posted 2019年10月7日
https://current.ndl.go.jp/node/39203