2020年9月24日付で、米国に拠点を置き公共政策課題の解決策開発等に取り組む非営利の研究組織・ランド研究所(RAND Corporation)は、調査報告書“The Digital Divide and COVID-19: Teachers’ Perceptions of Inequities in Students’ Internet Access and Participation in Remote Learning”を公開しました。
同報告書は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための学校閉鎖中における、生徒のインターネットアクセスに関する教員の認識と、生徒の家庭との相互コミュニケーションの関連性についての調査を報告しています。報告書の作成には、同研究所が2020年5月から6月にかけて実施した調査“American Instructional Resources Surveys(AIRS)”の回答データを使用しています。AIRSは同研究所がプロジェクトとして実施する、K-12(幼稚園から高校まで)の学校教員を対象にした授業教材等についての全国調査です。2020年の調査には、感染症の影響による学校閉鎖中の生徒への指導についての質問が含まれており、この質問群に関する5,978人の教員の回答が報告書の作成に使用されました。
報告書では主に以下のような知見が示されています。
・生徒やその家庭にインターネットアクセスの手段が欠如していることが原因で、教員と生徒のコミュニケーションが阻害される状況がしばしば発生している
・生徒の自宅でのインターネットアクセス可否に関する質問に、可能と回答した教員は、貧困率の高い地域ではわずか30%である一方、貧困率の低い地域では83%となった
・貧困率の高い地域の学校と貧困率の低い地域の学校における生徒の自宅でのインターネットアクセスの格差について、教員の認識は各州ごとに大きな相違があった
・自宅でインターネットにアクセスできる生徒は、授業課題を達成し、生徒の家庭とのコミュニケーションがとれていると教員が認識している傾向にあった
報告書では調査結果を受けて、学校教育において遠隔授業がこのまま継続すると、貧困等に伴う教育の不平等がインターネットアクセスの格差やコミュニケーションの欠如によって拡大する可能性を指摘し、政策的に生徒のインターネットアクセスを阻害するインフラ・制度上の課題を解消する必要があることなどを提言しています。
Published Research(RAND Corporation)
https://www.rand.org/pubs.html
※2020年9月24日付けの出版物に“The Digital Divide and COVID-19: Teachers’ Perceptions of Inequities in Students’ Internet Access and Participation in Remote Learning”とあります。
The Digital Divide and COVID-19: Teachers’ Perceptions of Inequities in Students’ Internet Access and Participation in Remote Learning(RAND Corporation)
https://doi.org/10.7249/RRA134-3
The Digital Divide and COVID-19: Teachers’ Perceptions of Inequities in Students’ Internet Access and Participation in Remote Learning [PDF:10ページ](RAND Corporation)
https://www.rand.org/content/dam/rand/pubs/research_reports/RRA100/RRA134-3/RAND_RRA134-3.pdf
関連:
RAND American Instructional Resources Survey (AIRS) Project(RAND Corporation)
https://www.rand.org/education-and-labor/projects/aep/selected-projects/airs.html
American Instructional Resources Surveys: 2020 Technical Documentation and Survey Results(RAND Corporation)
https://doi.org/10.7249/RRA134-4
参考:
韓国、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をうけ、子どもの遠隔教育環境の構築推進を発表:低所得層の子どもへのタブレット端末の無償貸与や通信費の支援等
Posted 2020年4月3日
https://current.ndl.go.jp/node/40703
韓国・科学技術情報通信部、2022年までに図書館や屋外施設といった公共の場に無料Wi-Fiのアクセスポイントを4万1,000箇所追加整備すると発表
Posted 2020年8月20日
https://current.ndl.go.jp/node/41793
北米の都市図書館協議会(ULC)、新型コロナウイルス感染拡大下でのデジタルデバイドの問題に対処するための行動戦略を提供するブリーフィング“Digital Equity in the Age of COVID-19”を公表
Posted 2020年9月15日
https://current.ndl.go.jp/node/41999