研究公正の促進を目的とした「研究者評価のための香港原則」(文献紹介)

オープンアクセス(OA)出版社PLOSの刊行する生物科学分野の査読誌“PLOS Biology”第18巻第7号(2020年7月)掲載のエッセイとして、“The Hong Kong Principles for assessing researchers: Fostering research integrity”が公開されています。

同文献は、2019年6月に香港で開催された「第6回研究公正に関する世界会議(6th World Conference on Research Integrity:WCRI)」において策定・承認された「研究者評価のための香港原則(The Hong Kong Principles for assessing researchers)」の内容・論拠・採用事例などを紹介するものです。「香港原則」は信頼性の高い研究には、研究の設計・実践・報告のあらゆる段階で、堅牢性・厳密性・透明性が求められるにもかかわらず、研究者評価においてこれらがほとんど考慮されていないという現状を背景に開発されました。研究公正を強固にするための実践が研究者のインセンティブとなるように保証することを通じて、研究活動の改善に繋げることが特に重視され、以下の5つの原則が定められました。

1. 責任ある研究の実践を評価する(Assess responsible research practices)
2. 研究成果の完全な公表を評価する(Value complete reporting)
3. オープンサイエンス(オープンリサーチ)の実践に報いる(Reward the practice of open science (open research))
4. 研究実践の多様性を認め合う(Acknowledge a broad range of research activities)
5. 査読や研究指導など学術研究に不可欠な活動の貢献を認識する(Recognize essential other tasks like peer review and mentoring)

「研究公正に関する世界会議」は、責任ある研究実践に向けた情報交換と議論を促進するための国際会議で、2007年にポルトガルのリスボンで第1回会議が開催されて以来、2・3年に一度の頻度で開催されています。第7回会議は2021年5月30日から6月2日まで南アフリカ共和国のケープタウンで開催される予定です。

Moher, David et al. The Hong Kong Principles for assessing researchers: Fostering research integrity. PLOS Biology. 2020, 18(7), e3000737.
https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3000737

関連:
Hong Kong Principles(WCRI)
https://wcrif.org/guidance/hong-kong-principles

WCRI
https://wcrif.org/

参考:
科学技術振興機構(JST)、「研究公正ポータル」を公開
Posted 2016年4月4日
https://current.ndl.go.jp/node/31217

文部科学省、「諸外国の研究公正の推進に関する調査・分析業務」(平成30年度科学技術調査資料作成委託事業)の成果報告書を公表
Posted 2019年7月24日
https://current.ndl.go.jp/node/38652