2020年7月15日、欧州大学協会(EUA)は、学術誌の転換契約と学術出版システムの将来に関する調査報告書“Read & Publish contracts in the context of a dynamic scholarly publishing system”の公開を発表しました。
本報告書は、EUAから調査を受託したコンサルタント会社Technopolis Groupが2019年6月から2020年3月にかけて実施した、欧州の大学・図書館関係者等を中心としたステークホルダーへのインタビュー、デルファイ法を用いた調査等によるデータ収集・分析の成果をまとめたものです。調査の実施目的として、転換契約が今後どのように発展し得るか、そのさらなる拡大が学術出版システムにどのような影響を与え得るかをより良く理解することを挙げています。
報告書では、学術出版システムの主なビジネスモデルに基づいて、学術出版システムの将来シナリオを3パターン設定し、参照シナリオとの比較検討を行っています。
シナリオ1(参照シナリオ):購読ベースの契約中心であり、出版から一定期間後にリポジトリを介してオープンアクセスで公開
シナリオ2:出版社とコンソーシアム間での転換契約中心
シナリオ3:出版社の学術誌又はプラットフォームを介したオープンアクセス出版契約中心
シナリオ4:コミュニティのプラットフォームを介したオープンアクセスの出版契約中心
調査結果では、シナリオ1は望ましくなく、シナリオ2も別のシナリオに引き継がれるまでの中間措置と考えられていること、回答者の大半はシナリオ3または4が望ましいと考えており、シナリオ3をより現実的と見なしていること等が示されています。
Read & Publish contracts in the context of a dynamic scholarly publishing system(EUC, 2020/7/15)
https://www.eua.eu/resources/publications/932:read-publish-agreements.html
Read & Publish contracts in the context of a dynamic scholarly publishing system [PDF:91ページ]
https://www.eua.eu/component/attachments/attachments.html?id=2917
参考:
CA1977 – 動向レビュー:学術雑誌の転換契約をめぐる動向 / 尾城孝一
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1977