2020年の米国の“Library of the Year”はシアトル公共図書館に:選出には多くの批判も

2020年6月3日、Library Journal(LJ)誌のウェブサイトにおいて、同誌とCengage Learning傘下のGale社が授与する2020年の米国の“Library of the Year”に、ワシントン州のシアトル公共図書館(SPL)を選出したと発表しました。

コミュニティーのニーズに積極的に耳を傾け、人種平等・公平性に重点を置いた取組を進めてきたことが評価されての受賞でしたが、その選出に多くの批判が寄せられています。

批判の内容は、SPLが2020年1月、反トランスジェンダーのグループが開催するイベントにSPLの会議室利用を許可したことを非難し、受賞にふさわしくないとするものです。SPLは、知的自由に関する同館の取組等に沿って利用を許可しましたが、人権活動家・団体から抗議の声があがっていました。

批判を受けて、LJ誌の編集長は6月4日及び10日に図書館コミュニティーに向けた声明を発表しました。10日付けの声明では、当初の受賞発表においてこの1月の出来事への言及を欠いていたことを謝罪しています。そして、同館の受賞は引き続き支持する一方、トランスジェンダー、ノンバイナリー、ジェンダー・ノンコンフォーミングの人々らを支援するため、関連するテーマのコラムを立ち上げる、LJ誌のスタッフに反トランスジェンダーと偏見についての研修を行う等5つの取組みを進める意向を表明しています。

さらに、クィア、トランスジェンダーの人々及び幅広い図書館コミュニティーの支援への継続的関与を具体的に示すものとして、LJ誌は賞のスポンサーであるGale社とともに、シアトルの人権団体Gender Justice Leagueに対し1万ドルの寄付を行うとしています。

The Seattle Public Library Listens Up | Gale/LJ Library of the Year 2020(LJ, 2020/6/3)
https://www.libraryjournal.com/?detailStory=Seattle-Public-Library-Listens-Up-Gale-LJ-Library-of-the-Year-2020

A Statement from LJ on the 2020 Library of the Year(LJ, 2020/6/4)
https://www.libraryjournal.com/?detailStory=A-Statement-from-LJ-on-the-2020-Library-of-the-Year

A Message to the Library Community(LJ, 2020/6/10)
https://www.libraryjournal.com/?detailStory=message-to-library-community

参考:
2018年の米国の“Library of the Year”が発表される:サンフランシスコ公共図書館
Posted 2018年6月6日
https://current.ndl.go.jp/node/36114

シアトル公共図書館(SPL)の無料Wi-Fiホットスポットプログラム、シアトル市からの資金を得て継続へ(記事紹介)
Posted 2015年12月4日
https://current.ndl.go.jp/node/30135

シアトル公共図書館においてもっとも多く利用停止処分を受けるのは有色人種、中でも子どもである(米国)
Posted 2018年8月28日
https://current.ndl.go.jp/node/36553