特殊コレクションを用いたオンライン講義に関する覚書:米・イェール大学バイネッキ貴重書・手稿図書館の事例(記事紹介)

米・イェール大学のバイネッキ貴重書・手稿図書館が、2020年4月7日付の同館のブログで特殊コレクションを用いた講義のオンライン化に関する記事“Out of the archives, onto Zoom: Some early notes on teaching online with special collections in a time of quarantine”を公開しています。

新型コロナウイルスの感染拡大によりオンライン講義へと移行が進む中で、オンライン講義への最適化のための課題は各学問分野ごとにあるものの、実践的で現物を用いて行う特殊コレクションを用いた指導において、一次資料を用いた授業が多い同大学における、同館職員や同大学の教員によるオンライン講義の最初の2週間で取組事例や、そこから得られた洞察を紹介するものです。

行われた取組の事例としては、これを機会としたアーカイブ資料のデジタル化の長所と短所についての文献の輪読、最終課題の展示実施のデジタル資料を用いたオンライン展示への変更、贋作や真正性についての講義における教員が所蔵する贋作を用いた学生をバイヤーに見立てたオークションの実施等が紹介されています。その他、用いる資料がほぼデジタル化されていたためそれを活用できた事例や、オンライン講義になると明らかになった際にデジタルアーカイブ未搭載の資料を撮影した教員の事例なども紹介されています。

また、同館職員は、実地での指導がないことにより何を得られて何を失っているのかを批判的に考えており、また特殊コレクションに基づいた学習の将来について熟考しているとし、学生の反応として、「オンラインデータベースで調査をするときはキーワード検索や年表の利点により、論文を基準に、それにあった証拠を選ぶ傾向があったが、物理的資料やフォルダの中の膨大な資料を調査するときは、自分の論文は見たものに影響され形成される」や「デジタルな組織化により、曖昧さやほとんど関係のないものの接続、フォルダを先入観なしで開けることによる予期せぬ側面が少なくなっており、アーキビストがどのようなキーワードを文書と関係づけるかに依存してしまい、研究の範囲を狭めているように感じる」といった事例を紹介しています。

今後数週間のうちに、学生からの視点もより含めたオンライン講義に関する記事の投稿も予定されています。

Out of the archives, onto Zoom: Some early notes on teaching online with special collections in a time of quarantine (Beinecke Rare Book and Manuscript Library, 2020/4/7)
https://beinecke.library.yale.edu/outofthearchivesontozoom