独・OA2020-DEによるオープンアクセス(OA)出版への「転換契約」に関する新しいモデルの提案(記事紹介)

独・OA2020-DEは、2020年2月18日付で“A smooth transition from subscriptions to APCs”と題した記事を公開しました。

同記事は、独・ビーレフェルト大学図書館に所属しOA2020-DEのOA連絡窓口を務めるNina Schönfelder氏による、OA出版への「転換契約(transformative agreement)」の新しいモデル提案に関する2020年1月27日付のディスカッションペーパーについて、著者自身がその概要を紹介するものです。記事では“Publish & Read”、“Read & Publish”のような既存の「転換契約」モデルは、学術雑誌のビジネスモデルを購読制から論文処理費用(APC)の支払制へ移行するにあたって必要な図書館の予算獲得転換や出版社の収益モデル転換に関するニーズに十分応えられていないことから、学術雑誌分野においてより現実的な「転換契約」モデルが必要とされていることを指摘しています。既存のモデルの問題点として、膨大な調整、大規模で即時的な資金の再配分、恒久的で大規模な資金の追加が必要とされること、出版社が個々の図書館やコンソーシアムに柔軟なオプトイン・オプトアウトを認めていないこと、などが挙げられています。

著者は、こうした課題の解決のためにシミュレーションに基づいて、世界の図書館の支出や出版社の収益に恒久的・深刻な変動が生じないこと、個々の図書館の支出に悪影響を及ぼさないような変化が生じないこと、コンテンツへアクセスするための購読制からOA資金助成のためのAPC支払へ速やかに移行できること、といった要件を満たす新しい契約モデル“smooth transition model”を提案しています。

Schönfelder氏のディスカッションペーパーの全文やシミュレーション内容、詳細な情報等は、ビーレフェルト大学の機関リポジトリ上で公開されています。

A smooth transition from subscriptions to APCs(OA2020-DE,2020/2/18)
https://oa2020-de.org/en/blog/2020/02/18/smoothtransition/

Schönfelder N. Proposal for a new model of transformative agreements: A smooth transition from subscriptions to APCs.(PUB – Publications at Bielefeld University)
https://doi.org/10.4119/unibi/2939995

参考:
独・OA2020-DE、オープンアクセス(OA)出版のための資金調達要件に関する調査レポートを公開
Posted 2019年11月22日
https://current.ndl.go.jp/node/39569

大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)、論文公表実態調査(2019年度)の結果を公開
Posted 2020年3月4日
https://current.ndl.go.jp/node/40394

スウェーデン王立図書館(NLS)、学術出版社との「転換契約」におけるBibsamコンソーシアム内での新しい費用配分モデルを検討した委託調査報告書を公開
Posted 2019年12月20日
https://current.ndl.go.jp/node/39803