cOAlition S、主要学術分野における研究成果オープンアクセス(OA)化の手段とPlan Sへの準拠状況に関する「ギャップ分析」の実施報告書を公開

2019年11月21日、cOAlition Sは、主要学術分野における研究成果オープンアクセス(OA)化の手段とPlan Sへの準拠状況に関する「ギャップ分析」の実施報告書として、“Open access potential and uptake in the context of Plan S – a partial gap analysis”を公開したことを発表しました。

「ギャップ分析」及び報告書の作成は、cOAlition Sの構成メンバーであるオランダ科学研究機構(NWO)に委託され、オランダ・ユトレヒト大学図書館のBianca Kramer氏らを中心とするプロジェクトチームによって実施されました。著者が研究成果をOA化するための手段の利用可能性と利用状況、及びPlan Sへの準拠状況について、学術分野を横断した定量的・記述的な初期データをcOAlition Sへ提供することが実施目的とされています。2018年11月に公開・2019年5月に改訂された「Plan Sの実現にかかる手引き(Guidance on the Implementation of Plan S)」では、OAジャーナル・プラットフォームのシェアを増やす必要のある学術分野の特定を目的として「ギャップ分析」の実施が言及されており、今回の報告書はこれに対応するものである、としています。

作成された報告書は、学術分野を超えて2017年におけるOAの全体像をPlan Sへの準拠状況とともに示す内容となっており、分析結果に基づく内容として主に以下のようなことが紹介されています。

・Plan S発表前の2017年の時点であらゆる分野の研究者が研究成果を公表後即座にOA化する選択肢を持っていた。
・2017年時点で、cOAlition Sの研究助成を受けた研究者が成果の公表に利用した雑誌の75%では、研究成果のOA出版を認めていた。
・分析対象時点でOA出版を認めていた学術雑誌の大半はハイブリッド誌であるが、現在各国で交渉が進む「転換契約(transformative agreement)」の進展や「Plan Sの実現にかかる手引き」の改訂版で導入された「転換雑誌(transformative journal)」の枠組みに組み込むことで、Plan Sへ準拠させることが可能である。
・2017年時点で、cOAlition Sの研究助成を受けた研究者が成果の公表に利用したほぼ全てのハイブリッド誌と50%の購読誌では、リポジトリ等へのセルフアーカイブによるOA化を認めていた。
・多くの分野で12か月のエンバーゴによりセルフアーカイブが可能となっていた。出版社がPlan S準拠のために取りうる最も簡単な選択肢はエンバーゴの撤廃である。社会科学分野を中心にエンバーゴを設定していない事例はあらゆる分野で確認できる。

報告書及び分析で使用されたデータセットはリポジトリZenodoで公開されています。

Gaps Report highlights why Plan S is needed(cOAlition S,2019/11/21)
https://www.coalition-s.org/gaps-report-highlights-why-plan-s-is-needed/

Open access potential and uptake in the context of Plan S – a partial gap analysis(Zenodo,2019/11/21)
https://zenodo.org/record/3543000

Dataset: Open access potential and uptake in the context of Plan S – a partial gap analysis(Zenodo,2019/11/21)
https://doi.org/10.5281/zenodo.3549020

cOAlition S maakt ‘gap analysis’ bekend(NWO,2019/11/21)
https://www.nwo.nl/actueel/nieuws/2019/11/coalition-s-maakt-gap-analysis-bekend.html

参考:
Science Europe、研究成果物の完全で即時のオープンアクセスを実現するための公的助成機関によるイニシアチブ“cOAlition S”の開始を発表
Posted 2018年9月6日
https://current.ndl.go.jp/node/36610

cOAlition S、Plan Sの要件を満たすための手順をまとめた手引きを公表:フィードバックを募集中
Posted 2018年11月29日
https://current.ndl.go.jp/node/37124

Coalition S、Plan Sの実現にかかる手引きへのフィードバックを受けて声明を発表:フィードバックの分析結果を2019年春に公表予定
Posted 2019年2月26日
https://current.ndl.go.jp/node/37660

Coalition S、「Plan Sの実現にかかる手引き」の改訂を発表:効力発生は2021年1月1日からへ延期
Posted 2019年6月6日
https://current.ndl.go.jp/node/38293