英国国立・大学図書館協会(SCONUL)、英国の大学における教育・学習支援のための著作権ライセンス利用状況の実態に関する調査報告書を公開

2019年8月12日、英国国立・大学図書館協会(SCONUL)は、英・Jisc Collectionsと英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)とともに作成に寄与した、英国の大学における教育・学習支援のための著作権ライセンス利用状況の実態に関する調査報告書“Understanding the value of the CLA Licence to UK higher education”の公開を発表しました。

この調査は、SCONUL・Jisc Collections・RLUKの支援と英国大学協会(UUK)・高等教育カレッジ連合(GuildHE)からの委託を受け、ロンドン大学シティ校のJane Secker氏らにより2018年後半に取り組まれたものです。高等教育機関向けに教育・学習目的の利用に対して著作物の複製を許可(印刷体、デジタル資料いずれからの複製も可)する、英国の著作権管理団体Copyright Licensing Agency(CLA)の「高等教育ライセンス(HE Licence)」の利用状況の実態が調査されています。

調査報告書では主に以下のようなことが示されています。

・英国と他国の教育関係の著作権制度の比較

・現在CLAのライセンスは主として、印刷体の図書からデジタル化された抜粋の複製物を学生に提供する目的で使用されている。これらの複製対象物の多くは電子的なフォーマットで全く利用できないか、過度に制限のついたライセンス条件下でのみ利用可能である。

・CLAのライセンスによるスキャン全体の51%が20機関によって行われており、少数の機関に利用が集中していることが示唆される。

・オープンアクセス(OA)資料の利用可能性の増加は、CLAのライセンス利用に最小限の影響しか与えていないように見える。これは、教育目的であれば再利用可能という条件が明確で、適法に利用できるOA資料を特定することが、機関にとって困難であることが理由となっている可能性がある。

New report tracks trend in use of copied materials in HE teaching(SCONUL,2019/8/12)
https://www.sconul.ac.uk/news/new-report-tracks-trend-in-use-of-copied-materials-in-he-teaching

New report tracks trend in use of copied materials in higher education teaching(Jisc,2019/8/14)
https://www.jisc.ac.uk/news/new-report-tracks-trend-in-use-of-copied-materials-in-higher-education-teaching-14-aug-2019

Understanding the value of the CLA Licence to UK higher education [PDF:69ページ](SCONUL)
https://www.sconul.ac.uk/sites/default/files/documents/CNAC%20Research%20Project%20Report%20FINAL%20with%20logos.pdf

参考:
CA1442 – 英国の大学図書館における著作権処理の実態 / 越田崇夫
カレントアウェアネス No.268 2001.12.20
http://current.ndl.go.jp/ca1442

【イベント】2018年度第5回千葉大学アカデミック・リンク/ALPSセミナー「高等教育における著作物の利用促進とそれを支援する体制」(3/18・千葉)
Posted 2019年2月20日
http://current.ndl.go.jp/node/37611

文化庁、授業目的公衆送信補償金に係る指定管理団体として「一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)」を指定
Posted 2019年2月19日
http://current.ndl.go.jp/node/37605

E2165 – 欧州の国立図書館における複写サービスの現状
カレントアウェアネス-E No.374 2019.08.08
http://current.ndl.go.jp/e2165