反人種差別としてのデジタル化対象選定基準(文献紹介)

Code4Lib Journal誌のIssue 45(2019年8月9日掲載)に、“Digitization Selection Criteria as Anti-Racist Action”と題する記事が掲載されています。著者は米・ルイジアナ州立大学図書館のデジタルプログラム及びサービス部門の責任者(Head of Digital Programs and Services)であるS. L. Ziegler氏です。

同館では現在、特別コレクションのデジタル化優先順位決定に関する新しい方針を策定中であり、同館が目標とする多様性、包摂性を方針に組み込む作業を行っています。多様性の実現において反人種差別を促進することの重要性に触れつつ、反人種差別を方針にどう組み込もうとしているかを紹介しており、現時点での具体的な取組として以下の2点を挙げています。

・取り上げられることの少ないコミュニティ、特にアフリカ系アメリカ人に関するコレクションの優先順位を上げるとともに、デジタル化優先順位のチェックリストに包摂性に関する基準を含めること

・特別コレクションの収集・公開等のプロセスにおいて、自機関内で行われた自己検閲(self-censorship)の歴史を調査するとともに、それらが人種差別に与するものとみなせる場合、対抗手段としてデジタル化により何ができるかを検討すること

本文中では、他機関におけるデジタル化対象資料選定方針の検討もなされており、資料選定に組織目標である多様性・包摂性の概念を取り込んだ先例として、米・デューク大学図書館が2017年に実施した取り組みを紹介しています。また、デジタル化が組織の任務を助ける役割を持つ一方で、デジタル化資料のオンライン公開が、当該資料に関係するコミュニティに害をなす可能性にも言及しています。

Digitization Selection Criteria as Anti-Racist Action(Code4Lib Journal)
https://journal.code4lib.org/articles/14667

Code4Lib Journal Issue 45, 2019-08-09
https://journal.code4lib.org/issues/issues/issue45

参考:
北米研究図書館協会(ARL)が報告書シリーズ“SPEC Kit”第356号を公開:「多様性と包摂」がテーマ
Posted 2017年9月13日
http://current.ndl.go.jp/node/34661

デューク大学、1960年代の学生新聞をデジタル化:人種差別撤廃関連の記事など
Posted 2013年7月11日
http://current.ndl.go.jp/node/23917